世界遺産時事:2024-2025年

世界遺産時事:2024-2025年
目次

世界遺産を巡る2024年・2025年の動向:保全と持続可能性への挑戦

I. はじめに:世界遺産を巡る2024年・2025年の動向

世界遺産は、地球上に存在する人類共通の宝として、その「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value: OUV)」が国際的に認められた場所を指します。

これらの遺産の保護と次世代への継承は、国際社会にとって極めて重要な課題であり続けています。

2024年は、世界遺産リストに新たな場所が加わり、その多様性が一層豊かになった一方で、地球規模の様々な課題が遺産の保全に深刻な影響を及ぼしました。

紛争、気候変動、そして観光客の集中によるオーバーツーリズムといった問題は、世界遺産を取り巻く環境が常に変化し、その保護が複雑化している現実を示しています。

2025年に向けても、これらの課題解決に向けた国際的な取り組みが加速しており、世界遺産を取り巻く状況は刻々と変化を続けています。

現在、世界遺産は文化遺産952件、自然遺産231件、複合遺産40件を含む合計1,223件に上り、その数は年々増加傾向にあります 。

この件数の増加は、人類が普遍的価値を認識する範囲が広がり、保護対象が多様化していることを明確に示唆しています。

これは、従来の文化財保護が主に単体の建造物や有形物に焦点を当てていたのに対し、より広範な「景観」や、人間と自然の相互作用によって形成される「文化的景観」といった概念が重視されるようになった国際的な潮流と深く関連しています 。

文化遺産保護制度の歴史的変遷が「有形のものから無形のものへ、単体から全体へ」と展開してきたという認識は、世界遺産リストにおける登録件数の増加と、その対象の多様化に直接的に繋がっていると考えられます。

人類の居住形態や生活様式、人間と環境の相互作用といったテーマが重要視されるようになったことで、より幅広い種類の遺産がその普遍的価値を認められるようになったのです。

II. 2024年 世界遺産委員会の主な決定事項

新規登録された世界遺産:日本の「佐渡島の金山」と世界の注目遺産

2024年7月21日から31日にかけて、インドのニューデリーで第46回世界遺産委員会が開催されました 。

この委員会では、日本が推薦した「佐渡島の金山」を含む24件の遺産が新たに世界遺産リストに登録され、世界遺産の総数は1,223件となりました 。  

日本の「佐渡島の金山」は、他の地域で採鉱等の機械化が進んだ時代に、高度な手工業による採鉱と製錬技術を継続したアジアで類を見ない鉱山遺跡として、その顕著な普遍的価値が認められました 。

この登録により、日本の世界遺産は合計26件となりました 。

佐渡の金山の評価は、単なる産業遺産としての価値に留まらず、その土地の「生業」と「風土」によって形成された「継続する景観」としての「文化的景観」の側面を強く含んでいます 。

これは、人間が自然と関わりながら特定の生業を長期間継続してきた証であり、その価値が国際的に認められたことを意味します。

日本が2004年に文化財保護法を改正し、「文化的景観」を文化財の一類型に加えた背景には、このような人間と自然の相互作用によって形成された景観の価値を重視する国際的な動向が影響しています 。

佐渡の登録は、日本の世界遺産登録における多様性、特に「文化的景観」の視点の重要性を再確認させるものと言えるでしょう。  

その他、2024年に新規登録された主な遺産には、中国の「バダインジャラン砂漠」(自然遺産)、ブラジルの「レンソイス・マラニャンセス国立公園」(自然遺産)、インドの「モイダム群」(文化遺産)、フランス領ポリネシアの「テ・ヘヌア・エナタ(マルキーズ諸島)」(複合遺産)などがあり、その地理的・テーマ的な多様性が際立っています 。

危機遺産リストへの追加と現状:紛争や環境問題に直面する遺産

2024年の世界遺産委員会では、パレスチナの「聖ヒラリオン修道院/テル・ウンム・アメル」が、緊急案件として新規登録と同時に危機遺産リストに追加されました 。

この決定は、2023年のパレスチナ・イスラエル戦争による損壊や、紛争地域にあることによるさらなる破壊の懸念が理由とされています 。

この事例は、その遺産が持つ普遍的価値が認められつつも、現在の紛争状況下ではその保全が極めて困難であるという国際社会の強い危機感を明確に示しています。  

この追加により、危機遺産に登録されている遺産は合計56件(文化遺産41件、自然遺産15件)となりました 。

危機遺産リストに名を連ねる多くの遺産は、シリア、イエメン、マリ、ウクライナ、パレスチナなど、紛争地帯や政情不安定な国に位置しています 。

これは、文化遺産が政治的・社会的な不安定さに直接的に晒される脆弱性を浮き彫りにしています。既存の危機遺産では、イエメンの「サナア旧市街」が、紛争による被災状況の確認が必要とされました 。  

また、紛争以外の要因による脅威も顕在化しています。

フランスの「パリのセーヌ河岸」(河川の水質汚濁や観光客向け看板増加による景観疎外)、ハンガリーの「ブダペストのドナウ河岸とブダ城地区およびアンドラーシ通り」(高層ビル建設による景観破壊)、イギリスの「ストーンヘンジ」(高速道路トンネル建設)など、開発や環境問題に起因する懸念が表明された遺産も複数存在します 。

これらの事例は、オーバーツーリズムや都市開発、気候変動といった問題が、より広範な地域で、より緩やかに、しかし確実に遺産を脅かしており、その対策には国際的な協力と長期的な視点が不可欠であることを示唆しています。

危機遺産リストへの追加や懸念表明は、世界遺産が直面する多岐にわたる脅威と、その保全の複雑性を物語っています。

III. 世界遺産が直面する喫緊の課題と対策

オーバーツーリズム:観光客集中による影響と持続可能な観光への取り組み

2024年は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックからの旅行需要が世界的に回復したことで、各地でオーバーツーリズム(観光公害)が喫緊の課題として顕在化しました 。

ベネチア、バルセロナ、マチュピチュといった世界的に人気の観光地では、観光客の集中が環境破壊、地域住民の生活環境悪化(物価高騰、騒音、ゴミ問題)、文化遺産の損壊、違法民泊の増加といった深刻な問題を引き起こしています 。

これらの問題は、単に観光客の増加に留まらず、遺産の「顕著な普遍的価値」を損なう直接的な脅威となり、その対策は遺産の物理的保全だけでなく、地域社会の持続可能性と文化の継承に直結するものです。  

これに対し、各地で持続可能な観光を目指す取り組みが強化されています。

日本の富士山では、2024年7月から9月にかけて吉田ルートで通行規制や通行料徴収が導入され、夜間に山頂を目指す「弾丸登山」が96%減少するという効果を上げました 。

この施策は、単に観光客数を一時的に制限するだけでなく、安全で快適な登山環境を確保し、富士山本来の信仰の歴史を感じられる登山ルートの提案を通じて、観光の質を高めることを目指しています 。

また、新潟県佐渡市では、「佐渡島の金山」の世界遺産登録を契機に、「二地域居住」や「長期滞在」を促進し、短期的な観光客の集中を避け、地域と共生する持続可能な誘客戦略を模索しています 。  

これらの事例が示すように、オーバーツーリズムへの対応は、観光客数の一時的な制限だけでなく、観光の質を高め、地域との共生を図る「持続可能な観光」への転換が求められていることを示唆しています 。

地域住民の生活環境の悪化は、その地の文化や景観を形成する基盤を揺るがします。そのため、遺産を「観光資源」としてのみ捉えるのではなく、地域社会の営みと一体となった「文化的景観」としての側面を重視し、地域住民との連携 や、その地の「生活」や「自然との向き合い方」を尊重する「サステナブルな旅」の視点 が重要になります。

遺産を「地域に根差す文化」として捉え、その持続性を高めることが、長期的な保全の鍵となるのです。  

気候変動の影響:地球規模の課題と遺産保護の連携

気候変動は世界遺産にとって深刻な脅威であり、その影響は年々顕著になっています。

2024年にはユネスコの新報告書が発表され、海洋の温暖化速度が過去20年で2倍、海面上昇速度が過去30年で2倍に加速していることが指摘されました 。

この傾向は、沿岸部の世界遺産や海洋生態系に壊滅的な影響を及ぼす可能性を秘めています。

例えば、フィリピンのコルディリェーラの棚田群 のような、水と密接に関わる文化的景観も、気候変動による水資源の変化や災害リスクの増大に直面する可能性があります。  

ユネスコは、気候変動への対応を強化しており、その取り組みは多岐にわたります。2024年には、アフリカの遺産を対象とした気候変動ワークショップや、英国の3つのユネスコ遺産地(ノースデボン生物圏保護区など)でのパイロットプロジェクト(2024年2月~2025年7月)が開始されました 。

これらのプロジェクトは、気候変動が文化遺産と自然遺産に与える影響を軽減するための新たなアプローチとデータツールの開発を目指しています 。

また、イエメンの世界文化遺産都市での洪水早期警報システムへの日本による支援も継続されており 、災害リスク軽減のための具体的な協力が進められています。

さらに、太陽エネルギープロジェクトにおける再生可能エネルギーに関するガイダンス策定の取り組みも進められており 、持続可能なエネルギーへの移行と遺産保護の連携が模索されています。  

気候変動は、物理的な破壊だけでなく、文化的景観を形成する「自然と人間の相互作用」 のバランスを崩し、その価値を根底から揺るがす脅威です。

文化的景観は「持続可能な土地利用に関する独特の技術を反映」している ため、気候変動はその基盤を揺るがし、何世代にもわたって受け継がれてきた営みを困難にします。

ユネスコが気候変動対策を「文化」の文脈で捉え、地域社会との連携や技術支援を重視しているのは、遺産保護が単なる保存行為ではなく、人類の持続可能な未来への取り組みと不可分であるという認識に基づいています。

遺産保護が災害や気候変動への抵抗力を文化によって強化する という視点は、遺産が過去の遺物であるだけでなく、現代の課題解決のための知恵の源泉でもあるという、より広範な理解を促します。  

IV. 「文化的景観」の重要性と地域社会の役割

人間と自然の共創:世界遺産における「文化的景観」の概念

世界遺産条約において「文化的景観」の概念が導入されたのは1992年であり、これは「自然と人間の組み合わせた作品」 と定義されています。

この概念は、人間と人間を取り巻く自然環境の間における相互作用の多様性を表現し、しばしば持続可能な土地利用に関する独特の技術や、人と自然の特殊な精神的関係を反映するものです 。

日本の文化財保護においても、2004年に文化財保護法が改正され、「文化的景観」が文化財の一類型に加わりました 。

これは、従来の文化遺産が主に有形物(建造物など)に焦点を当てていたのに対し、より広範な「景観」を対象とすることで、無形の価値や地域社会の営みを保護の対象に含めることを可能にしました。  

文化的景観は、その形成過程や特徴によって大きく3つのタイプに分類されます 。

  • 意匠された景観(Designed landscape): 人間が意図的に設計し、創造した景観を指します。庭園や公園、宗教的な空間などがこれに該当します 。
  • 有機的に進化する景観(Organically evolving landscape): 社会の様々な需要に応じて自然環境と一体となって形成され、進化してきたものです。これはさらに、すでに発達過程が終了している「残存する景観(Relict or fossil cultural landscapes)」と、現在も伝統的な社会の中で進化し続けている「継続する景観(Continuing cultural landscapes)」に細分されます。田園や牧場、棚田などが代表例です 。  
  • 関連する景観(Associative cultural landscape): その土地の自然環境が宗教や学術、芸術と深く結びつき、その民族に大きな影響を与えている景観です。自然そのものにほとんど手が加えられていなくても、人間がそこに文化的な意義を付与している点が特徴で、宗教上の聖地とされた山などが含まれます 。

これらの分類は、世界遺産が単なる建造物や自然の絶景だけでなく、地域社会の「生業」や「精神性」といった無形の価値 を包含するようになった、より包括的な遺産保護の潮流を示しています。

フィリピンの「コルディリェーラの棚田群」は、数千年にわたるイフガオの人々の米作りの営みが作り上げた壮大な景観であり、「継続する景観」の好例です 。

また、日本の「紀伊山地の霊場と参詣道」は、山岳信仰の霊場と修行の道、そしてそれらを取り巻く自然と人間の営みが一体となった「文化的景観」として高い価値を持つとされています 。

特にニュージーランドの「トンガリロ国立公園」は、1990年に自然遺産として登録された後、マオリ族の聖地としての文化的つながりが評価され、1993年に世界で初めて複合遺産としての「文化的景観」の価値が認められました 。

トンガリロ国立公園の事例は、自然と文化、有形と無形が不可分であることを象徴しており、この概念が世界遺産保護のあり方を大きく変え、より包括的な視点をもたらしたことを示しています。  

地域住民との協働による保全と継承

文化的景観の保全・管理には、専門家や政府機関だけでなく、広く一般市民、特に地元コミュニティを含む「すべての利害関係者の参加」が不可欠です 。

これは、文化的景観が「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの」 であるためです。

地域住民と連携し、文化的景観のあるべき姿を構築することが、その持続的な保全にとって極めて重要であると認識されています 。  

しかし、その保全には多くの課題が存在します。

オーバーツーリズムによる住民生活の悪化や景観破壊 、そして景観保全にかかる経済的負担の捻出の難しさ などが挙げられます。

これらの問題は、地域住民の生活を圧迫し、結果として文化的景観の維持を困難にする可能性があります。  

このような課題に対し、持続可能な保全のためには、地域住民がその場所とどのように関わって生活しているか、自然環境と生活がどのように結びついているかを尊重する視点が不可欠です。

地域の人々との交流を通じてその知恵を学ぶ「サステナブルな旅」の視点も重要であり 、これは無秩序な経済から離脱し、富の再分配などにより文化を保護するという考え方にも通じます 。

文化的景観の保護は、単なる物理的な保存に留まらず、地域社会の「持続可能な開発」と密接に結びついています。

地域住民の生活や生業が景観の価値の根源であるため、彼らの生活を維持し、経済的インセンティブを提供することが、結果的に遺産の長期的な保全に繋がるという、より包括的なアプローチが求められています。

遺産を「地域社会に根差す文化を活用する」 ものと捉え、地域経済の活性化と住民の生活の質の向上を同時に図ることで、遺産保護がより実効性を持つという、現代的な世界遺産保護の認識を反映しています。

V. 2025年に向けた世界遺産の展望

次期世界遺産委員会の開催と審議予定

第47回世界遺産委員会は、2025年に開催が予定されています 。

当初バーレーンでの開催が予定されていましたが、情勢不安のためパリのユネスコ本部での開催に変更されました 。

この開催地変更は、世界遺産委員会という国際的な会議が、その開催地が変更されるほどに国際情勢の影響を受けることを意味します。

これは、危機遺産リストに紛争地の遺産が多く含まれる ことと同様に、文化遺産が現代社会の課題と切り離せない存在であることを示しています。

委員会の決定が遺産の未来を左右するため、国際社会の協力と安定が、遺産保護の基盤として極めて重要であるという認識に繋がります。  

委員会では、新規登録候補地の審議に加え、既存の世界遺産の保全状況報告、危機遺産リストからの削除・追加検討など、多岐にわたる議題が審議されます 。

これらの審議は、世界遺産の保護と継承に向けた国際的な努力の方向性を決定する上で、毎年重要な役割を担っています。

日本の新たな世界遺産候補地の動向

2025年に日本がユネスコへ推薦書を提出する可能性のある候補地として、「飛鳥・藤原の宮都とその関連遺産群」が注目されています 。

この遺産は2007年に暫定リスト入りしており、2025年夏から秋にかけてイコモスによる現地調査が予定されています 。  

過去には「彦根城」や「古都鎌倉の寺院・神社ほか」も有力候補とされていましたが、これらは30年以上暫定リストに残りながら国内推薦物件に残れなかったり、不登録勧告による推薦取り下げの経緯があります 。

このような長期化の背景には、世界遺産委員会での新規登録枠が制限され、1か国からの推薦枠も1件に制限されたという国際的な状況の変化があります 。

このため、日本の次の登録は最短で2026年(令和8年)以降になると見られています 。  

この登録プロセスの厳格化は、世界遺産登録が単なる「名誉」ではなく、顕著な普遍的価値の厳格な証明と、国際的な比較研究に基づく評価が求められる、極めて競争の激しいプロセスであることを示しています。

日本の文化財が持つ価値を国際的な文脈でどのように位置づけ、その「普遍性」を説得力を持って示すか、という点が今後の課題となります。

この過程では、「テーマ別研究の活用」や「幅広い専門家との連携」が、遺産の普遍的価値を明確にし、国際的な評価を得る上で不可欠な要素となります 。

文化政策の国際的な議論と持続可能な開発

2025年9月29日から10月1日にスペインで開催されるユネスコの世界文化政策会議「MONDIACULT 2025」は、文化を持続可能な開発の「独立した目標」として国連の次期開発戦略に位置づけるための重要な場となります 。

この会議では「文化と気候行動」「文化、遺産、危機」といったテーマが議論され、文化が持続可能性を実現する力であるという認識が強調されます 。

ユネスコは、文化が価値観や自尊心、社会的結束の源となり、創造性と更新のための最も強力な力であると表明しています 。  

MONDIACULT 2025が文化を持続可能な開発の「独立した目標」と位置づけることを目指しているという点は、文化が経済や環境と同様に、人類の持続可能な未来に不可欠な要素であるという国際的な認識の表れです。

「文化と気候行動」「文化、遺産、危機」といったテーマが議論されることは、文化遺産が気候変動や紛争といったグローバルな課題の解決に貢献しうる、あるいはその解決策の一部であるという視点を示しています。

国際社会では、文化遺産保護の議論が、単なる「保存」から、気候変動対策、経済発展、社会参加といった「持続可能な開発」の広範な文脈へと深化しています。

アイルランドでは、2025年までの国家文化政策枠組み「Culture 2025」が策定されており、文化と創造性が個人と社会にもたらす価値、文化遺産の保護、持続可能な開発への文化の統合などが掲げられています 。

また、インドも2025年に向けて6つのサイトをユネスコの暫定リストに追加しました 。これらの国家レベルでの文化政策は、この国際的な潮流に沿っており、文化遺産保護が単なる文化行政の枠を超え、国家戦略レベルで統合的に推進されるべきだという認識が広まっていることを示しています。

世界遺産は、過去の遺物であるだけでなく、現代社会が直面する課題を解決し、未来を築くための「生きた資源」としての役割を担うべきだという国際的な合意形成が進んでいるのです。

VI. まとめ:未来へつなぐ世界遺産の価値

2024年、そして2025年は、世界遺産がその「顕著な普遍的価値」を未来に継承するために、国際社会が連携して喫緊の課題に取り組む重要な時期となります。

新規登録された遺産は、その多様性を通じて人類の創造性と自然の豊かさを再認識させます。

日本の「佐渡島の金山」の登録は、文化的景観という概念の深化と、人間と自然の相互作用が織りなす価値の重要性を示唆しています。

一方で、パレスチナの「聖ヒラリオン修道院」が新規登録と同時に危機遺産に指定された事例や、他の紛争地帯の遺産が直面する脅威は、世界遺産が現代の地政学的・社会経済的状況と密接に絡み合っている現実を浮き彫りにしています。

また、オーバーツーリズムや気候変動といった地球規模の課題は、遺産保護の困難さと、より包括的で持続可能なアプローチの必要性を強く訴えかけています。

富士山や佐渡の事例に見られるように、持続可能な観光への転換は、遺産の物理的保全だけでなく、地域社会の持続可能性と文化の継承に不可欠な要素です。

特に「文化的景観」の概念は、人間と自然の共生、地域社会の営みと遺産保護の密接な関係を浮き彫りにし、未来に向けた持続可能な観光や文化政策のあり方を考える上で不可欠な視点を提供します。

遺産の保護は、単なる過去の遺物を守る行為に留まらず、地域社会の生活を支え、経済的インセンティブを提供し、文化が持つ創造性と回復力を活用することで、現代社会が直面する課題を解決する手段となり得ます。

世界遺産は、単なる観光地ではなく、地球規模の課題と向き合い、人類の知恵と多様性を未来へつなぐための生きた教材であり続けるでしょう。

その保全と継承は、国際社会全体の持続可能な発展に貢献する、普遍的な取り組みとして今後もその重要性を増していくと考えられます。

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この記事を書いた人

世界遺産ハントの管理人。

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