世界遺産は、人類共通の宝として未来に引き継ぐべき「顕著な普遍的価値」を持つ建造物や自然地域が登録されます。しかし、その輝かしいリストから、残念ながら姿を消してしまった場所がこれまでに3件存在します。一体なぜ、これらの遺産は抹消されることになったのでしょうか。その理由を深掘りします。
アラビアオリックスの保護区(オマーン)- 2007年抹消

世界遺産リストから最初に姿を消したのが、オマーンの「アラビアオリックスの保護区」です。1994年に自然遺産として登録されましたが、わずか13年後に抹消されるという異例の事態となりました。
抹消の理由:
主な原因は、オマーン政府による保護区の大幅な縮小にありました。登録後、政府は石油・ガス資源開発のために保護区の面積を約90%も削減する決定を下しました。これにより、アラビアオリックスの生息地が著しく脅かされ、その結果、保護区として維持されるべき「顕著な普遍的価値」が失われたと判断されました。ユネスコ世界遺産委員会は、この政府の決定が遺産の完全性と真正性を損なうとみなし、抹消を決定しました。
ドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ)- 2009年抹消

美しい景観と歴史的建造物が織りなすドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」は、2004年に文化遺産として登録されました。しかし、わずか5年後には抹消という厳しい判断が下されました。
抹消の理由:
問題となったのは、エルベ川に架かる「ヴァルトシュレスヒェン橋」の建設でした。ドレスデン市は交通渋滞緩和のため、景観保護区内に新たな橋を建設する計画を進めました。ユネスコ世界遺産委員会は、この橋の建設が「渓谷の景観を著しく損ない、遺産の顕著な普遍的価値を損なう」と警告し、建設中止を求めましたが、市は建設を強行。結果として、世界遺産としての登録基準を満たさなくなったと判断され、抹消が決定されました。歴史的景観と現代社会の利便性の間で、均衡が保たれなかった悲劇的な例と言えるでしょう。
リバプール – 海商都市(イギリス)- 2021年抹消

記憶に新しいのが、イギリスの「リバプール – 海商都市」の抹消です。2004年に文化遺産として登録され、大英帝国の海洋貿易の繁栄を物語る港湾施設群として評価されていました。
抹消の理由:
抹消の最大の理由は、大規模な再開発プロジェクトでした。特に、ウォーターフロント地区での高層ビル建設や、フットボールクラブ「エヴァートンFC」の新スタジアム建設などが問題視されました。ユネスコ世界遺産委員会は、これらの開発が「遺産の顕著な普遍的価値を著しく損ない、景観を不可逆的に変化させる」と警告を発し、度重なる改善勧告を出しました。しかし、開発計画は中止されることなく進行したため、最終的に世界遺産としての完全性が失われたと判断され、登録が抹消されました。経済発展と歴史的景観保護のバランスの難しさを示す、現代的な課題が浮き彫りになった事例です。
まとめ:なぜ「抹消」されるのか
これら3つの事例から共通して見えてくるのは、世界遺産が一度登録されたからといって、その価値が永続的に保証されるわけではないということです。開発優先の政策、景観を損なう建設、適切な保護管理の怠慢など、様々な要因によって「顕著な普遍的価値」が失われたと判断された場合、登録抹消という厳しい判断が下されます。
世界遺産は、その価値を未来に引き継ぐために、登録後の継続的な保護と管理が不可欠であることを、これらの事例は私たちに強く訴えかけています。
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