毎年夏に開催される世界遺産委員会は、新たな人類共通の宝物がリストに加わる瞬間として、世界中の注目を集めます。2025年の第47回世界遺産委員会は、パリのユネスコ本部で開催されることになりますが、どのような議題が議論され、どのような決定が下されるのでしょうか?
このブログ記事では、過去の委員会の動向や現在の世界が抱える課題を踏まえ、2025年の世界遺産委員会で主要な議題となりそうな事柄について、解説していきます。新規登録の行方から、遺産保護の最前線で議論される喫緊の課題まで、その多岐にわたる論点に迫ります。
新規登録遺産の審査:新たな宝物の誕生

世界遺産委員会の最大の注目点の一つは、やはり新規登録遺産の審査です。毎年、締約国から推薦された候補地が、専門機関(イコモス:文化遺産、IUCN:自然遺産)による厳格な評価を経て、委員会で審議されます。
2025年の委員会では、既に推薦が提出され、評価プロセスが進んでいる複数の候補地が議論の対象となるでしょう。具体的な候補地のリストは委員会開催前に公開されますが、以下のような多様な地域やテーマの遺産が登録を目指すことが予想されます。
文化的景観: 人類が自然と調和して生み出した独自の景観(例:伝統的な農業景観、先住民の聖なる景観など)。
産業遺産: 産業革命や特定の産業の発展を示す遺構(例:初期の工業地帯、特定の技術革新を示唆する工場群など)。
歴史的都市景観: 長い歴史を持つ都市の、建造物だけでなく都市計画全体としての価値。
自然遺産: 固有の生態系、生物多様性のホットスポット、地球の地質学的歴史を示す場所など。
複合遺産: 文化と自然の両方の顕著な普遍的価値を持つ遺産。
特に、未だ世界遺産が少ない地域や、特定のカテゴリー(例えば、20世紀の建築遺産、水に関連する遺産など)の遺産への注目が高まる可能性があります。新規登録は、その地域の歴史や文化、自然の価値が国際的に認められる瞬間であり、大きなニュースとなるでしょう。
危機に瀕する世界遺産リスト:保護の現状と課題
世界遺産委員会は、新規登録だけでなく、既に登録されている遺産の保護状況についても厳しく監視します。特に重要な議題となるのが、「危機に瀕する世界遺産リスト」(危機遺産リスト)に関する議論です。
このリストに登録されている遺産は、紛争、自然災害、気候変動、開発圧力、管理体制の不備などにより、その顕著な普遍的価値が深刻な脅威に晒されていると判断されたものです。2025年の委員会では、以下の点について議論がなされるでしょう。
新規の危機遺産登録: 新たに脅威に直面している遺産をリストに追加するかどうかの検討。
既存の危機遺産の状況評価: リストに既に登録されている遺産について、締約国が講じた保護措置の効果や、脅威の現状を評価します。
危機遺産からの脱却: 保護措置が奏功し、状況が改善された遺産をリストから削除するかの決定(これは非常に稀なケースですが、成功事例として注目されます)。
近年、特に深刻なのは、紛争による破壊(例:ウクライナの文化遺産への影響、中東の紛争地の遺産)と、気候変動による影響(例:サンゴ礁の白化、氷河の融解)を受けている遺産に関する議論です。
委員会は、これらの遺産に対する国際社会からの支援や、締約国が取るべき具体的な行動を勧告するでしょう。
気候変動対策:世界遺産保護の喫緊の課題

気候変動は、もはや遠い未来の脅威ではなく、世界遺産保護の最前線で直面している喫緊の課題です。2025年の委員会でも、気候変動が世界遺産に与える影響と、それに対する対策は主要な議題となることは確実です。
影響評価の強化: 気候変動による具体的な影響(海面上昇、異常気象、生態系の変化など)を正確に評価し、報告するよう締約国に求められるでしょう。
適応策と緩和策: 気候変動の影響に適応するための対策(例:防潮堤の建設、生態系の回復プロジェクト)や、気候変動を緩和するための取り組み(例:炭素排出量削減への貢献)が議論されます。
政策提言: ユネスコとして、気候変動に関する国際的な枠組み(例:パリ協定)への世界遺産としての貢献や、気候変動対策へのさらなるコミットメントを求める政策提言がなされる可能性があります。
「気候関連危機遺産」の議論: 気候変動を主な要因として危機に瀕している遺産に対し、特別なカテゴリーや支援策が必要かどうかの議論が進むかもしれません。
気候変動は、文化遺産にも自然遺産にも等しく影響を与えるため、この議題は委員会全体にわたって議論されることになるでしょう。
オーバーツーリズム対策と持続可能な観光:観光客と遺産の共存

世界遺産登録による観光客増加は、経済的恩恵をもたらす一方で、オーバーツーリズム(過剰な観光)という深刻な問題を引き起こしています。2025年の委員会でも、この問題への対策が重要な議題となるでしょう。
管理計画の強化: 観光客の流入を適切に管理し、遺産への負荷を軽減するための具体的な管理計画(例:入場制限、予約制、時間帯管理、ガイドラインの策定など)の策定と実施が求められます。
地域住民との共生: 観光収益を地域住民に還元し、彼らの生活や文化への影響を最小限に抑えつつ、遺産保護への参加を促す方策が議論されます。
「持続可能な観光」の推進: ユネスコが掲げる持続可能な観光の原則に基づき、環境負荷を低減し、文化的・社会的な影響を考慮した観光のあり方が模索されます。
遺産教育と意識啓発: 観光客や地域住民に対し、遺産の価値と保護の重要性、そして責任ある観光行動を促すための教育プログラムの強化が検討されます。
観光は世界遺産保護の重要なパートナーとなり得ますが、そのバランスをいかに取るか、委員会はその解決策を探るでしょう。
遺産保護におけるデジタル技術の活用とサイバーセキュリティ

近年、デジタル技術の活用は世界遺産保護の様々な側面で進展を見せています。2025年の委員会では、その活用事例と、それに伴う新たな課題が議論される可能性があります。
3Dスキャンとデジタルアーカイブ: 遺産の詳細な記録を残し、物理的な損壊からの復元や、研究、教育に活用するためのデジタル化の推進。
モニタリングとAIの活用: ドローンや衛星画像、AIを用いた遺産の劣化監視、違法行為の早期発見など。
VR/AR技術とバーチャルツーリズム: 物理的なアクセスが困難な遺産の魅力を伝えるためのバーチャル体験の提供。
サイバーセキュリティの課題: デジタル化された遺産情報や管理システムへのサイバー攻撃のリスクと、その対策。
特に、紛争地帯の遺産や、物理的なアクセスが制限される場所において、デジタル技術は代替的な保護・記録手段としてその重要性を増しています。
その他:専門家からの報告と勧告
「負の遺産」に関する議論: 紛争や悲劇の記憶を伝える遺産の保護と解釈について。
先住民の権利と遺産: 先住民が伝統的に管理してきた土地や文化遺産における、彼らの権利の尊重と参加。
世界遺産基金の運用: 基金の財政状況や、支援プロジェクトの進捗に関する報告。
世界遺産リストの「代表性、均衡、信頼性」: 特定の地域や種類の遺産に登録が偏っている現状の是正に向けた議論。
結論:2025年委員会は世界遺産の未来を左右する重要な岐路
2025年の世界遺産委員会は、単なる新規登録の発表の場に留まらず、世界遺産が直面する現代的課題への対応策を探る、極めて重要な会議となるでしょう。
気候変動、紛争、オーバーツーリズムといった地球規模の課題が、遺産保護に大きな影を落としています。
パリのユネスコ本部で繰り広げられる議論は、世界遺産が人類共通の宝として、いかに未来へと引き継がれていくべきかを示す羅針盤となるはずです。
私たち一人ひとりが、これらの議論に目を向け、世界遺産が持つ多面的な価値と直面する問題を理解することで、その保護と継承に貢献できるはずです。
2025年の委員会の動向に、引き続き注目していきましょう。
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