| 国 | フィリピン共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 1993年/2013年範囲変更 |
| 登録基準 | (ⅱ)(ⅳ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻160p |
| 英文タイトル | Baroque Churches of the Philippines |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
フィリピンのバロック様式の教会群とは
地震や台風、戦争に耐え抜いた堅牢な聖堂群
フィリピンのバロック様式の教会群は、スペイン植民地時代に築かれたカトリック教会の代表的な建築群であり、東南アジアにおけるヨーロッパ建築技術と現地文化との融合を示す貴重な文化遺産です。1993年にユネスコ世界遺産に登録されたこの遺産には、マニラの「サン・アグスティン教会」、イロコス・ノルテ州の「パオアイ教会」、イロコス・スル州の「サンタ・マリア教会」、そしてイロイロ州ミアガオにある「ミアガオ教会」の4つの教会が含まれています。
これらの教会はいずれも16世紀末から18世紀にかけて建てられ、当時フィリピンを統治していたスペインの宗教的・政治的支配の一端を担っていました。しかし、それらは単なる模倣ではなく、現地の気候や地震など自然災害への対策、さらにフィリピンの土着文化や装飾技術を取り入れた、独自の「フィリピン・バロック様式」とも言える建築表現を形作っています。
サン・アグスティン教会(マニラ)は、フィリピン最古の石造教会であり、内部には精緻な天井の装飾やヨーロッパ由来の宗教画が残されています。フィリピンにおける宣教活動の中心的役割を担ったこの教会は、長い歴史の中で度重なる地震や戦火をくぐり抜けながらも、今なお荘厳な姿を保っています。
パオアイ教会は、力強い外壁と飛び出したバットレス(控え壁)によって知られており、地震に備えた構造が際立っています。その重厚な姿は、バロック建築の要素と地元建築の融合を象徴するものです。サンタ・マリア教会は、丘の上に建てられた戦略的な立地が特徴で、防衛機能を兼ね備えた独特の教会建築となっています。
一方、ミアガオ教会は、豊かな装飾が施されたファサードが際立っており、ココナツの木や地元の民族衣装など、フィリピン固有のモチーフが彫刻として表現されています。これにより、キリスト教信仰と土着文化が見事に融合した芸術的な建築となっています。
これらの教会群は、単なる宗教建築ではなく、異なる文化が出会い、適応し、融合した歴史的証言です。スペインの植民地政策と布教活動、そしてそれに応じたフィリピンの人々の創造的な応答の中から生まれた建築様式は、今日においても強い文化的価値を持ち続けています。フィリピンのバロック様式の教会群は、キリスト教の伝播とその受容の歴史を建築という形で伝える、アジアにおける希少な文化遺産です。

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