| 国 | トルコ共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2018年 |
| 登録基準 | (ⅰ)(ⅱ)(ⅳ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻172p |
| 英文タイトル | Göbekli Tepe |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
ギョベクリ・テペとは
世界最古の神殿ともいわれる紀元前9,600年の巨石構造
トルコ南東部、シャンルウルファ近郊の丘陵地に位置するギョベクリ・テペは、人類史上最古級の宗教的建造物とされる先史時代の巨石遺構であり、2018年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。この遺跡は、紀元前9600年頃から紀元前8200年頃にかけて築かれたとされており、農耕が本格的に始まる以前の時代に、狩猟採集を生業としていた人々がこれほどの大規模な建築活動を行っていたという事実に、考古学界は大きな衝撃を受けました。
遺跡の中心には、T字形をした高さ5メートル以上、重さ10トンを超える巨大な石柱が環状に並べられた構造物が複数存在しており、これらは「円形神殿」とも呼ばれています。石柱には、ライオン、イノシシ、キツネ、ヘビ、鳥など様々な動植物が浮き彫りにされており、当時の人々が自然界の生命に対して特別な意味を見出していたことがうかがえます。建物の基礎部分は丁寧に整地され、石材の加工や設置には高度な技術と労働力が必要であったと考えられており、これが人類の初期の社会組織や信仰の成熟を示す貴重な証拠とされています。
驚くべきことに、ギョベクリ・テペの建設時点では、まだ農耕や牧畜が一般的には行われておらず、定住生活も限定的であったと推測されています。これまでの定説では、農耕の発達が社会の定住化や宗教的制度の成立を促したと考えられていましたが、ギョベクリ・テペはその順序を逆転させ、宗教的活動がむしろ農耕社会の成立を先導した可能性を示唆しています。つまり、共同の儀礼の場として神殿を建設するために人々が集い、やがて定住と農耕へと移行したという新たな歴史観が提案されるに至ったのです。
さらに、この遺跡は長い時間をかけて何度も意図的に埋め戻されており、各世代が新たな建物を築くたびに古いものを埋葬するように更新していたことが分かっています。これは、儀礼や信仰の変遷だけでなく、記憶や伝統の継承という文化的意識の存在を示すものと考えられます。
現在、ギョベクリ・テペの発掘は継続中であり、全体のごく一部しか明らかになっていないとされていますが、すでに確認された建造物の規模と精緻さは、当時の人類がいかに高度な精神文化を築いていたかを物語っています。この遺跡は、建築・宗教・社会組織の起源を再考させる、人類史において極めて重要な場所といえるでしょう。

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