| 国 | モンゴル国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2011年 |
| 登録基準 | (ⅲ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻175p |
| 英文タイトル | Petroglyphic Complexes of the Mongolian Altai |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
モンゴルのアルタイ山脈にある岩面画群とは
有史以前の人々の生活を描いた岩石彫刻
モンゴル西部のアルタイ山脈に位置する岩面画群は、ユーラシア大陸の古代文化を物語る貴重な証拠として、世界的に高い評価を受けている文化遺産です。これらの岩面画は「モンゴル・アルタイの岩面画」として、2011年にユネスコの世界遺産に登録されました。主にツァガーン・サラール、ビチグト・ハイルハン、アランゴスの三地域にわたり、紀元前1万年から紀元後の数千年間にわたり刻まれた膨大な数の岩絵が確認されています。
これらの岩面画群には、狩猟や牧畜、儀礼、戦闘、舞踊など、さまざまな生活の場面が描かれており、当時の人々の暮らしや信仰、社会構造を知る手がかりとなります。初期の岩絵は、主に狩猟採集民によって描かれたと考えられ、弓を持った人物や野生動物の群れが写実的に表現されています。やがて時代が進むにつれて、家畜の導入や騎馬文化の発展が反映された図像が増え、羊や山羊、馬、ラクダ、牛などの家畜を引き連れた群像、さらには戦士と騎馬の図像も現れるようになります。
これらの図像は単なる芸術表現ではなく、社会や宗教的な意味を持つ象徴としても機能していたと考えられます。たとえば、儀式や葬送に関連すると見られる場面には、人物が列をなして歩く様子や、シャーマンのような存在が描かれており、当時の宗教的世界観を映し出していると見なされています。また、動物や人物の姿が重なり合うように刻まれていることから、特定の岩が長期間にわたって聖地として崇拝されていた可能性も指摘されています。
技法においても、時代や地域によって多様性が見られます。浅く線刻されたものから深く彫り込まれたものまで、表現の幅は広く、時代の流れに沿った様式の変化を視覚的にたどることができます。さらに、一部の岩面画には赤や黒の顔料が用いられ、色彩による装飾も施されていた痕跡が確認されています。
アルタイ山脈の岩面画は、中央アジアにおける遊牧文化の起源と発展を知る上で不可欠な遺産であり、またユーラシア大陸に広がる岩面芸術の系譜の中でも特に保存状態が良く、文化的連続性を示す稀有な例といえます。自然環境と一体化したこの景観は、古代の人々が自然と共生しながら築いた精神文化の豊かさを今に伝えており、現代の私たちにも深い感動と洞察をもたらします。
このように、アルタイ山脈の岩面画群は、モンゴルのみならず、ユーラシア全域の古代史や人類文化の研究にとって極めて重要な位置を占める文化遺産です。その保存と継承は、過去と現在、そして未来を結ぶ架け橋としての意義を持っています。

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