| 国 | アゼルバイジャン共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2007年 |
| 登録基準 | (ⅲ) |
| その他の区分 | 文化的景観 |
| 公式テキストページ | 中巻176p |
| 英文タイトル | Gobustan Rock Art Cultural Landscape |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
ゴブスタン・ロック・アートの文化的景観とは
先史時代からの歴史を物語る岩絵
アゼルバイジャンの首都バクーの南西、およそ60キロに位置するゴブスタンには、先史時代の人類の生活を今に伝える貴重な岩絵群が存在しています。この地は「ゴブスタン・ロック・アートの文化的景観」として2007年にユネスコ世界遺産に登録され、人類の歴史や表現文化を理解する上で極めて重要な場所とされています。
ゴブスタンの岩絵は、カフカス山脈とカスピ海に挟まれた乾燥した岩山地帯に点在するもので、約4万点に及ぶとされる彫刻や線刻画が見つかっています。これらは主に新石器時代から中世に至るまで、長期間にわたって刻まれてきたものであり、年代によって異なる様式や主題を観察することができます。特に多く見られるのは、狩猟や舞踊、船の航行、動物の群れ、神秘的な儀式の様子などであり、当時の人々の生活や信仰、社会構造を豊かに物語っています。
中でも注目されるのは、船をかたどった線刻画です。カスピ海に近接する地理的条件から、海上移動や交易に関する記録が視覚的に残された可能性があり、これらは人類が水上交通を用いた初期の証拠ともされています。また、動物の姿や人間の群像は、写実的かつ生き生きとした線で描かれており、芸術的な観点からも高い評価を受けています。
この地域にはまた、古代の墓地や住居跡、道具類の遺構も発見されており、岩絵とともに当時の文化的景観を形づくっています。たとえば、岩陰には人々が暮らした痕跡が残り、食料の加工や火の使用など、日常生活に関わるさまざまな証拠が見つかっています。これにより、ゴブスタンは単なる芸術作品の展示場ではなく、人々が実際に生活し、自然と密接に関わりながら形成された文化的空間であったことが分かります。
加えて、地質学的にもこの地は特異な場所であり、多数の泥火山や天然ガスの噴出孔が存在しています。こうした自然現象もまた、古代人の信仰や宇宙観と結びついていた可能性があり、神聖視されていたと推測されています。岩絵に描かれた象徴的なモチーフや神秘的な儀式の場面は、そのような自然の力との対話の表れとも考えられます。
現在では、ゴブスタンは考古学的な保護区域として整備され、博物館や展示施設を通して一般公開されており、多くの研究者や観光客を引きつけています。その文化的・歴史的価値は、アゼルバイジャンのみならず、人類全体の遺産として広く認識されており、先史時代の人間の創造力と精神性にふれることができる貴重な場となっています。

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