トリポリのラシード・カラーミー国際見本市会場

トリポリのラシード・カラーミー国際見本市会場
ローマン・デッカート, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
レバノン共和国
登録区分文化遺産
世界遺産登録年2023年/2023年危機遺産登録
登録基準(ⅱ)(ⅳ)
その他の区分危機遺産
公式テキストページ中巻187p
英文タイトルRachid Karameh International Fair of Tripoli

※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら

トリポリのラシード・カラーミー国際見本市会場とは

オスカー・ニーマイヤーとレバノンの技術者たちの交流

トリポリのラシード・カラーミー国際見本市会場は、レバノン北部に位置する都市トリポリに築かれた大規模な展示施設であり、20世紀中葉の建築と都市計画の優れた実例として知られています。この施設は、著名なブラジル人建築家オスカー・ニーマイヤーの設計によって1960年代に着工されました。彼はブラジルの首都ブラジリアの都市計画にも関わったことで世界的に名を知られており、この見本市会場もその前衛的な建築理念が色濃く反映された作品です。

見本市会場の建設は、レバノンが経済成長を遂げていた時期に、国際的な貿易と文化交流の拠点として構想されました。敷地面積はおよそ70万平方メートルにもおよび、複数の展示館、劇場、円形広場、屋外舞台、プール、ヘリポート、モスク、住宅施設など、総合的な都市空間として計画された点が特徴です。それぞれの建造物は、曲線と直線を巧みに融合させた未来的なフォルムを持ち、ニーマイヤーの特徴である彫刻的かつ有機的なデザインが際立っています。

しかし、1975年に始まったレバノン内戦の影響により、建設は中断され、プロジェクトの多くは未完成のままとなりました。それでもなお、現存する構造物は20世紀モダニズム建築の重要な遺構とされ、時間を超えた美的価値と構想力を今に伝えています。未完成ながらも明確な都市計画思想と建築美学が貫かれており、建物の配置や視線の導線、空間の開放性と統一感など、都市空間としての完成度は非常に高いものです。

この見本市会場は、建築だけでなく、1960年代という時代がもつ社会的・政治的希望や国際協調への願いを象徴する存在でもあります。レバノンにおいては、地中海沿岸という地理的特性を活かし、文化や経済の交流拠点として期待されていました。ユネスコはこの施設を2023年に世界遺産として登録し、同時に危機遺産リストにも掲載しました。それは、施設の老朽化や放置によって損傷が進んでおり、保全と活用が急務であると認識されているためです。

トリポリのラシード・カラーミー国際見本市会場は、20世紀の建築・都市計画史における重要なマイルストーンであり、その文化的・歴史的価値は国境を超えて認められています。今後は、保存・再活用の取り組みを通じて、未完のモダニズム建築が新たな価値をもって次世代へと継承されていくことが期待されます。

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この記事を書いた人

世界遺産ハントの管理人。

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