コー・ケー:古代リンガプラもしくはチョック・ガルギャーの考古遺跡

コー・ケー:古代リンガプラもしくはチョック・ガルギャーの考古遺跡
イタリア、オジモ出身のDu Hangst, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
カンボジア王国
登録区分文化遺産
世界遺産登録年2023年
登録基準(ⅱ)(ⅳ)
その他の区分
公式テキストページ中巻41p
英文タイトルKoh Ker: Archaeological Site of Ancient Lingapura or Chok Gargyar

※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら

コー・ケー:古代リンガプラもしくはチョック・ガルギャーの考古遺跡とは

クメール王朝のもう1つの都

コー・ケーは、カンボジア北部の山間に広がる9世紀末から10世紀中葉にかけての古代クメール王国の重要な都市遺跡であり、一時期王都として栄えた特異な歴史的背景と、独自の建築様式で知られます。2023年にユネスコの世界文化遺産に登録されたこの遺跡群は、ヒンドゥー教的宇宙観に基づいた都市構造を持ち、自然との調和の中で形成された宗教都市の典型例と評価されています。

10世紀、ジャヤーヴァルマン4世は王位継承を巡る争いの末、アンコールを離れ、密林に囲まれたこの地に新都「リンガプラ(聖なるリンガの都市)」を築きました。「チョック・ガルギャー」とも呼ばれるこの地は、約20年にわたりクメール王朝の宗教的・政治的中心として機能しました。首都としての短命にもかかわらず、40以上の寺院と多数のリンガ、祠堂、石碑が構築され、王権と神聖性を結びつけるための壮大な宗教都市として発展しました。

コー・ケー遺跡群の象徴的建造物は、「プラサート・トム」と呼ばれる高さ36メートルの七層からなるピラミッド型寺院です。この建物はクメール建築の中でも極めて珍しく、他のアンコール遺跡に見られる水平的・回廊的構造とは対照的に、垂直方向への志向が明確に表現されています。山形の構造はヒンドゥー教における宇宙の中心、メール山を象徴しており、頂上には巨大なリンガが据えられ、王の神格化を明確に示す意図がうかがえます。

また、彫刻表現にも注目すべき点が多くあります。コー・ケーでは、ダイナミックで筋肉質な神像が数多く出土しており、例えばシヴァ神やカーラ、ガルーダなどの像は、のちのアンコール様式とは異なる力強い写実性と装飾性を有しています。この独特な様式は「コー・ケー様式」と呼ばれ、王の統治理念や信仰観が芸術表現に強く投影されていることを物語ります。

コー・ケーの都市計画は、王宮、寺院、貯水池(バライ)を備えた複合的なものであり、水資源の管理や農業の維持も考慮された構造となっています。また、王の死後、王都は再びアンコールに戻されましたが、コー・ケーはその後も宗教的聖地として利用され続けました。

今日、コー・ケーはジャングルに包まれた神秘的な雰囲気を保ちつつ、クメール文明の多様性と力強さを象徴する重要な遺跡群として国際的な注目を集めています。その短い栄華にもかかわらず、建築、彫刻、都市計画において類例の少ない特徴を示すコー・ケーは、古代東南アジアの政治・宗教・芸術の在り方を深く理解するうえで欠かせない文化遺産です。

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世界遺産ハントの管理人。

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