| 国 | トルコ共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2017年 |
| 登録基準 | (ⅱ)(ⅲ)(ⅳ)(ⅵ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻45p |
| 英文タイトル | Aphrodisias |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
アフロディシアスとは
前3世紀にさかのぼるアフロディーテ神殿と都市遺跡
アフロディシアスは、現在のトルコ南西部、エーゲ海地方の内陸に位置する古代都市遺跡であり、紀元前2世紀頃からローマ帝国時代にかけて栄えた都市である。その名は愛と美の女神アフロディテに由来し、同女神を祀る壮大な神殿を中心に発展した。アフロディシアスは、特に芸術と学術の中心地として名を馳せ、彫刻や建築の分野で高度な水準を誇ったことで知られている。2017年にはユネスコの世界文化遺産に登録され、その保存状態の良さと芸術的遺産の重要性が高く評価されている。
都市の中心には、アフロディテ神殿が立ち、これは地域住民の信仰の対象であると同時に、都市の政治的・社会的アイデンティティを形成する基盤でもあった。ローマ時代にこの神殿はキリスト教の大聖堂へと転用されるが、その建築的痕跡は今日まで良好に保存されており、宗教の変遷と都市の持続性を示している。神殿の遺構には、列柱や祭壇、石彫装飾などが見られ、当時の神殿建築の様式美を物語っている。
アフロディシアスは、ローマ時代には自治権を認められた都市として、政治的安定と経済的繁栄を享受した。この背景には、都市が卓越した彫刻学校を擁していたことがある。アフロディシアスの石工たちは、近隣のマルマラ地方で産出される良質な白大理石を用い、数々の彫像や建築装飾を制作した。これらの作品は、繊細な表情、衣紋の流れ、筋肉の描写において高い技術を示しており、当時のローマ世界各地に輸出されたとされる。市内に設けられた彫刻工房や記念碑の数々は、この都市が芸術文化の一大中心地であったことを如実に伝えている。
加えて、都市にはローマ的都市施設が整備されていた。観客席を1万3千人以上収容できるスタジアムは、ギリシア式とローマ式の様式が融合した希少な例であり、競技会や市民行事の舞台として機能していた。劇場や浴場、アゴラ(広場)、セバステイオン(皇帝礼拝殿)などの建築群は、都市の政治的、宗教的、娯楽的側面を支える重要な施設であった。とりわけセバステイオンに施された浮彫装飾は、ローマ皇帝と神々の関係を称揚するもので、当時のローマ帝国のプロパガンダと宗教観を理解するうえで貴重な資料である。
アフロディシアスの都市構造と遺跡の保存状態は極めて良好であり、古代の都市生活、宗教、芸術、教育の諸側面を総合的に理解することを可能にしている。これにより、単なる宗教都市にとどまらず、学術・文化・政治の複合的機能を持つ都市として、その歴史的意義が高く評価されている。
アフロディシアスは、古代世界における人間の美と知への追求、そして都市の継続性と多様性を今に伝える稀有な遺産であり、現代においてもその芸術的・文化的価値は失われていない。

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