| 国 | イエメン共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 1986年/2015年危機遺産登録 |
| 登録基準 | (ⅳ)(ⅴ)(ⅵ) |
| その他の区分 | 危機遺産 |
| 公式テキストページ | 中巻75p |
| 英文タイトル | Old City of Sana’a |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
サナアの旧市街とは
中世アラビアの風景を今に伝える
サナアの旧市街は、イエメンの首都サナアに位置し、1986年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。この都市は、アラビア半島でも最古の都市の一つとされ、その起源は紀元前の時代にまで遡ると考えられています。標高2,200メートルにある高地に築かれたサナアは、古くから交易と宗教の中心地として栄え、現在でもイスラーム文化とアラビア建築の粋を伝える貴重な歴史都市となっています。
旧市街は、周囲を囲む古い城壁の内部に広がっており、約6,000棟以上もの伝統的な住居が立ち並びます。特に注目されるのが、多層構造の高層住宅です。これらの建物はしばしば5〜9階建てで、日干し煉瓦(アドベ)で造られ、外壁には白漆喰で幾何学模様が描かれています。窓枠や壁面装飾には石膏細工や彩色ガラスが施され、建物全体に独特の美しさと統一感をもたらしています。これらの建築様式は、他に類を見ない都市景観を形成しており、サナアの象徴的な存在とされています。
市街地の中心部には、スーク・アル=ミルフ(塩市場)をはじめとする伝統的な市場(スーク)が広がり、香辛料、衣料、金属製品など、さまざまな商品が売買される活気ある空間が今も残っています。また、モスクや神学校(マドラサ)、公共浴場(ハマーム)など、宗教と生活が密接に結びついた建築群も多く存在し、都市の社会構造や信仰生活の一端を垣間見ることができます。
最も有名な宗教建築の一つが、大モスク(アル=ジャーミウ・アル=カビーラ)です。このモスクはイスラーム初期の7世紀に建てられたと伝えられており、イスラーム建築の歴史においても重要な位置を占めています。シンプルながら荘厳な佇まいは、サナアの精神的な中心としての役割を今日に至るまで果たし続けています。
サナアの旧市街は、都市全体がひとつの建築芸術ともいえる存在であり、その伝統的構造と住文化が現代まで連綿と受け継がれてきました。石造や煉瓦造の家々には、代々の家族が暮らし、結婚、出産、祝祭などの生活の営みが息づいています。さらに、各家庭の屋上は農園や水タンクとして活用され、都市の持続可能な生活モデルとしても注目されています。
しかし近年では、内戦や自然災害により、旧市街の多くの建物が損傷を受け、遺産としての保存が危機にさらされています。そのため、サナアの旧市街は2015年に危機にさらされている世界遺産リストにも加えられ、国際的な保護と支援が求められています。
このように、サナアの旧市街は、建築・都市構造・生活文化が一体となって残る、極めて価値の高い歴史遺産です。アラビア世界の伝統的都市文化を現代に伝えるこの場所は、今なお多くの人々に深い感動を与えています。

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