| 国 | シリア・アラブ共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 1986年/2013年危機遺産登録 |
| 登録基準 | (ⅲ)(ⅳ) |
| その他の区分 | 危機遺産 |
| 公式テキストページ | 中巻76p |
| 英文タイトル | Ancient City of Aleppo |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
アレッポの旧市街とは
キャラバンが行き交った東西交易の拠点
アレッポの旧市街は、シリア北部に位置する古代都市アレッポの中心部に広がる歴史的地域であり、1986年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。この都市は、メソポタミアと地中海、アナトリアとアラビア半島を結ぶ古代交易路の要衝に位置しており、その起源は紀元前2千年紀以前に遡ると考えられています。長い歴史の中で、多様な文明や宗教、文化が交差し、複雑で豊かな都市構造が築かれてきました。
旧市街の象徴的な存在としてまず挙げられるのが、アレッポ城です。市街の中心に位置するこの要塞は、紀元前の時代から存在し、イスラーム時代には強固な防御施設として大規模に拡張されました。現在の姿は、主にアイユーブ朝やマムルーク朝の時代に整備されたもので、石造の城壁、塔、宮殿、モスクなどが城内に残されており、中東地域における中世軍事建築の傑作とされています。
また、アレッポの旧市街には、細く曲がりくねった路地が張り巡らされ、その両脇には伝統的な石造の住居が密集しています。これらの住宅は、内庭(クルニシュ)を中心とした構造をもち、高い壁で外界と隔てられており、イスラーム文化に根ざした生活様式を今に伝えています。街路網は自然地形に調和しながら形成されており、都市計画における柔軟性と機能性が見て取れます。
旧市街のもう一つの魅力は、宗教建築の多様性にあります。ウマイヤ・モスク(大モスク)は、8世紀に建設された壮麗な礼拝空間であり、ミナレットや中庭、礼拝堂などがイスラーム建築の特徴をよく示しています。さらに、アレッポにはキリスト教徒やユダヤ人の居住区も存在し、それぞれに教会やシナゴーグが建てられており、多宗教共存の歴史が色濃く刻まれています。
経済面では、アレッポのスーク(市場)が重要な役割を果たしてきました。旧市街に広がるスーク群は、その総延長が13km以上に及ぶとされ、屋根付きのアーケード状の通り沿いに多種多様な商店が並び、絹織物、香料、石鹸、銅器などが売買されていました。これらのスークは、単なる商業の場を超えて、都市社会の交流と結束を促す重要な空間でありました。
しかし、2010年代に勃発したシリア内戦の影響により、アレッポの旧市街は甚大な被害を受けました。多くの歴史的建造物が破壊され、伝統的な都市景観が失われる危機に直面しています。このため、2013年には「危機にさらされている世界遺産」として再登録され、国際社会による修復・保存活動が続けられています。
アレッポの旧市街は、古代から続く都市文明の重層的な歴史を体現する希少な存在です。建築、宗教、商業、都市構造など多面的な価値を持つこの地は、シリアおよび人類全体にとってかけがえのない文化遺産といえます。今後の保護と再生が、地域の平和と再興の象徴となることが期待されています。

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