| 国 | アゼルバイジャン共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2000年 |
| 登録基準 | (ⅳ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻77p |
| 英文タイトル | Walled City of Baku with the Shirvanshah’s Palace and Maiden Tower |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
シルヴァンシャー宮殿と乙女の塔のある城壁都市バクーとは
多様な文化の影響を受けたアゼルバイジャン建築の傑作
アゼルバイジャンの首都バクーに位置する「シルヴァンシャー宮殿と乙女の塔のある城壁都市バクー」は、カスピ海沿岸に広がる歴史的都市であり、東洋と西洋の文化が交差する地として長い歴史を刻んできました。この地域は2000年にユネスコ世界文化遺産に登録され、その価値はイスラーム建築、ゾロアスター教の遺構、中世の防衛建築などが共存する、他に類を見ない都市景観にあります。
バクーの城壁都市(イチェリ・シェヘル)は、12世紀から16世紀にかけてシルヴァン・アプシャロン建築様式を代表する建造物が築かれた要塞都市で、かつてはシルヴァンシャー王朝の首都として栄えました。この時代に建設された「シルヴァンシャー宮殿」は、王宮、モスク、霊廟、浴場などで構成される複合施設で、イスラーム建築の洗練された装飾技法と石工技術を今に伝えています。装飾を控えつつも均整の取れた建築群は、精神性と機能性を両立した宮殿建築として高く評価されています。
宮殿の近くにそびえる「乙女の塔(ギズ・ガラシ)」は、バクーのシンボルともいえる石造の塔で、その起源については諸説あります。紀元前のゾロアスター教の祭祀施設であったという説や、12世紀の防衛塔としての用途があったという説などがありますが、その建築技術と神秘性により、多くの伝説が生まれてきました。塔は円形の本体に側面から突き出た構造が特徴で、その構造的独自性も注目されています。
バクー旧市街の都市構造は、迷路のような狭い路地と中庭を中心とした住居が入り組んでおり、地中海的要素と中央アジア的都市計画が融合した独自の都市景観を形成しています。さらに、歴史的浴場や隊商宿、市場なども遺されており、中世イスラーム都市の生活文化を今に伝える貴重な例とされています。
近代化と石油開発によりバクーの市街地は大きく変化を遂げましたが、城壁都市内には時の流れを超えて保存された歴史層が色濃く残されています。現在では、アゼルバイジャン政府による保存活動と観光振興が進められており、過去と現在が共存する文化的景観として多くの人々を惹きつけています。
このように、「シルヴァンシャー宮殿と乙女の塔のある城壁都市バクー」は、建築・宗教・都市文化の交差点としての価値をもち、カフカス地域における人類の文化的発展を象徴する世界遺産といえるでしょう。

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