| 国 | イラン・イスラム共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2013年 |
| 登録基準 | (ⅱ)(ⅲ)(ⅳ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻113p |
| 英文タイトル | Golestan Palace |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
ゴレスタン宮殿とは
新旧の芸術が融合したガージャール朝の王宮
ゴレスタン宮殿は、イランの首都テヘランの中心部に位置する歴史的建造物で、カージャール朝時代(1794年〜1925年)に栄えた王宮の一部として知られています。この宮殿は、古代ペルシャの伝統と近代ヨーロッパの建築様式が見事に融合した例として評価され、イラン建築史において極めて重要な位置を占めています。2013年には、その歴史的・芸術的価値が認められ、ユネスコの世界遺産に登録されました。
ゴレスタン宮殿の起源は、サファヴィー朝期にまで遡るとされていますが、本格的な整備と発展は、カージャール朝の初代国王アーガー・モハンマド・カーンの時代から始まりました。その後、ファトフ・アリー・シャーやナーセルッディーン・シャーといった歴代の国王たちにより改修・増築が重ねられ、豪華な宮殿群と庭園、噴水、タイル装飾が備えられた壮麗な空間が完成しました。特にナーセルッディーン・シャーはヨーロッパ文化に強い関心を持っており、その影響を受けた建築や装飾が多く施されたことが、ゴレスタン宮殿の大きな特徴となっています。
宮殿の敷地内には複数の建築物が配置されており、それぞれが異なる用途と美的特徴を持っています。たとえば、「マルカネ・クーロシ」は公式の儀式や謁見の場として用いられ、壮麗な鏡張りの装飾が施された「タラーール・アイネ」(鏡の間)は、訪れる者に強い印象を与えます。また、「シャムス・オル・イマーラ」と呼ばれる高層建築は、当時のイランにおけるヨーロッパ式建築の先駆けとも言える存在であり、遠くからでもその姿を認識できるほど象徴的な塔となっています。
さらに、ゴレスタン宮殿は芸術と工芸の粋が集められた空間でもあります。色鮮やかなタイル装飾、繊細な漆細工、金属工芸やカリグラフィーなど、イランの伝統的な美術技術が随所に見られ、これらは王権の権威と文化的洗練を視覚的に表現する手段でもありました。また、館内には歴代の王族の肖像画や貴重な調度品、陶磁器、ガラス製品などが展示され、イラン王朝の生活様式や美意識を知るうえで貴重な資料となっています。
ゴレスタン宮殿は、王宮としての機能だけでなく、政治や外交の舞台としても重要な役割を果たしました。たとえば、19世紀から20世紀初頭にかけて、多くの外交使節の謁見や条約調印がこの宮殿内で行われており、その歴史的な舞台裏を今に伝えています。近代化の波の中で多くの王宮が失われた中、ゴレスタン宮殿は比較的良好な状態で保存され、現代においてもその建築的・歴史的価値を維持しています。
今日では博物館として一般に公開されており、訪問者は当時の王宮の雰囲気を直接感じることができます。ゴレスタン宮殿は、イランの歴史と文化の豊かさを象徴する遺産であり、訪れる人々に深い感銘を与える空間として、今なお多くの人々に親しまれております。

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