アル・ヒジルの考古遺跡(マダイン・サレハ)

アル・ヒジルの考古遺跡(マダイン・サレハ)
サウジアラビア王国
登録区分文化遺産
世界遺産登録年2008年
登録基準(ⅱ)(ⅲ)
その他の区分
公式テキストページ中巻34p
英文タイトルHegra Archaeological Site (al-Hijr / Madā ͐ in Ṣāliḥ)

※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら

アル・ヒジルの考古遺跡(マダイン・サレハ)とは

ナバテア王国の権勢を伝える預言者サレハの街

アル・ヒジル、またはマダイン・サレハは、サウジアラビア北西部に位置する古代都市遺跡で、紀元前1世紀から紀元1世紀にかけて栄えたナバタイ王国の南端にあたる重要な交易拠点です。この遺跡は、ペトラ(現在のヨルダン)に次ぐナバタイ人の都市として知られ、2008年にサウジアラビア初のユネスコ世界文化遺産として登録されました。古代アラビアの乾燥地帯において高度な都市文明がいかに成立し、繁栄したかを示す貴重な証拠群が残されています。

アル・ヒジルには、岩を削って造られた壮大な墓陵群が点在し、その数は100基以上にのぼります。これらの墓の正面には、ナバタイ建築特有のファサードが施されており、ヘレニズムやローマ建築の影響を受けた洗練された様式が見られます。中でも「カスル・ファリド(孤立の宮殿)」は、高さ16メートルの堂々たる岩山に単独で築かれた墓で、その規模と保存状態の良さからアル・ヒジルを象徴する存在とされています。

この遺跡にはまた、ナバタイ人の優れた水利技術の跡も多数残されています。降雨量が極端に少ない地域であったにもかかわらず、水を集め、貯え、必要に応じて分配する高度な水管理システムが構築されていました。貯水槽、井戸、導水溝などの構造物が現在も確認でき、乾燥地における都市生活の持続可能性を支えていたことがわかります。

アル・ヒジルは、アラビア半島を南北に縦断する交易路上に位置し、インド洋から紅海、さらには地中海世界とを結ぶ交易の中継地として重要な役割を果たしていました。乳香、没薬、香料、絹、貴金属といった貴重品がこの地を経由して運ばれ、ナバタイ王国はその交易の利潤をもとに、文化的にも経済的にも大きな発展を遂げました。

この遺跡からは、アラム語や古代ナバタイ語で記された碑文も多数発見されており、当時の人々の名前、職業、社会制度、信仰などに関する情報が読み取れます。宗教的には、多神教的な信仰体系が確認されており、ペトラの神々と同様の神々への信仰が行われていたと考えられています。神殿や祭祀施設の痕跡も発見されており、ナバタイ人の宗教儀礼がこの地でも盛んに行われていたことを示唆しています。

アル・ヒジルは、砂漠の岩山に巧みに融合した建築物群を通じて、ナバタイ文明の洗練された美的感覚と実用性を同時に伝える稀有な遺産です。また、ペトラ以外でナバタイ文化をここまで体系的に理解できる場所は他になく、建築・都市計画・宗教・交易といった多方面から古代アラビア世界の深層に迫ることができる貴重な考古学的資料群といえます。このような価値により、アル・ヒジルは世界文化遺産として高い評価を受けています。

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世界遺産ハントの管理人。

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