| 国 | オマーン国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 1988年 |
| 登録基準 | (ⅲ)(ⅳ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻33p |
| 英文タイトル | Archaeological Sites of Bat, Al-Khutm and Al-Ayn |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
バット、アル・フトゥム、アル・アインの考古遺跡とは
謎の国家の集落跡
オマーン北西部の内陸に位置する「バット、アル・フトゥム、アル・アインの考古遺跡」は、青銅器時代(紀元前3千年紀)の人類の営みを今に伝える重要な遺跡群であり、1988年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。これらの遺跡は、アル・ハジャル山脈の裾野に点在し、オマーンの先史文化、特にウム・アン=ナール文化に属する建築技術や社会構造、宗教観を示す貴重な考古学的証拠群を提供しています。
この世界遺産は、大きく3つの主要な構成要素で成り立っています。第一の「バット」には、円筒形の石積み墓(「ハニーワークタワー」や「蜂の巣型墓」とも呼ばれる)が多数残されており、これらの墓は紀元前3000年頃のものとされます。これらは大小さまざまな石を組み合わせて築かれており、乾燥地帯での建築技術と死後の世界に対する信仰をうかがわせます。現在確認されているだけでも100基を超える墳墓が存在し、これほどの規模で保存されている例はアラビア半島でも極めて稀です。
第二の構成要素である「アル・フトゥム」は、主に石造建築の遺構と灌漑施設、農耕地跡を含むエリアであり、集落としての機能を担っていたことが考えられます。また、ここでは銅の採掘や加工に関連する遺物も発見されており、当時の経済活動における鉱業の重要性が示唆されています。オマーンは古くから銅の産地として知られており、メソポタミアやインダス地域との交易を通じて広域的な文化交流が行われていたと考えられます。
第三の「アル・アイン」は、バットと同様の墳墓が直線状に並ぶ特異な景観を持ち、墓の配置から特定の儀式や天文的知識が関係していた可能性も指摘されています。これらの墓もまた、円形の石積みによって構成され、内部には複数の埋葬室が設けられています。このことから、単なる個人の埋葬ではなく、家族や集団単位での宗教的行為が行われていたことが推測されます。
これらの遺跡群に共通する特徴は、周辺の自然環境に調和した建築と、人間の死生観、社会組織、技術力の高さを同時に物語っている点にあります。山と砂漠に囲まれた厳しい自然環境において、石材を用いた堅牢な構造物が築かれ、また長期間にわたって使用・再利用された形跡も確認されていることから、この地域の集団が高度に組織化された社会であったことがうかがえます。
バット、アル・フトゥム、アル・アインの遺跡群は、アラビア半島の先史文化において中心的な役割を果たした地域であり、今日においても青銅器時代の人類の営みを物理的に確認できる数少ない場所の一つです。その保存状態と規模の大きさ、そして文化的多様性を反映する建築様式により、古代オマーン文明の貴重な証言者として世界的に高い評価を受けています。

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