| 国 | トルコ共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2021年 |
| 登録基準 | (ⅲ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻167p |
| 英文タイトル | Arslantepe Mound |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
アルスランテペの遺丘とは
近東における国家社会の出現を示す遺跡
アルスランテペの遺丘は、トルコ東部マラティヤ近郊に位置する考古遺跡であり、紀元前6千年紀から紀元前11世紀までの長い期間にわたり人々の営みが続けられた場所です。2021年にユネスコの世界文化遺産に登録されたこの遺跡は、人類社会における初期の国家形成や階層的社会の出現、行政機構の発展を示す貴重な証拠として国際的に高く評価されています。
「アルスランテペ」とは「ライオンの丘」を意味し、その名は遺跡の入口にある一対の石造ライオン像に由来します。遺丘(テッペ)全体はおよそ30メートルの高さをもち、数千年にわたる人類の居住の積み重ねが層状に保存されており、発掘調査によって様々な時代の建築遺構や生活の痕跡が確認されています。特に紀元前4千年紀末から紀元前3千年紀初頭にかけてのウルク期にあたる層では、巨大な宮殿建築が発見されており、当時の政治的・宗教的中枢としての機能を担っていたことが明らかになっています。
この宮殿複合体は、広大なホールや儀式用の空間、複数の貯蔵庫、行政活動を示唆する文書記録の痕跡を含み、社会の分化と統治体制の存在を示す重要な考古学的資料となっています。また、石や泥板に刻まれた初期の記号体系や封印の出土は、文字の誕生以前の記録管理の発達段階を示すものとして、初期の行政機構と経済活動の複雑化をうかがわせます。
アルスランテペではまた、金属器の使用に関する重要な発見もありました。特に銅製の剣や短剣は、その製作技術の高さから、初期青銅器時代の冶金技術の発展を示す貴重な証拠とされています。これらの武器の存在は、当時の共同体がすでに防衛や戦闘を想定した組織化された社会構造を有していた可能性を示しています。
さらに、アルスランテペの埋葬遺構からは、身分の高い人物と見られる遺体が特別な品々と共に埋葬されていることが確認されており、社会階層の存在が考古学的に裏付けられています。このような階層性の証拠は、都市国家への発展の過程を知る上で極めて重要です。
アルスランテペは、メソポタミア文明の影響を受けつつも独自の社会制度と文化を築いており、古代アナトリアにおける国家形成の初期段階を理解するうえで不可欠な遺跡です。その多層的な構造と保存状態の良さにより、古代文明の興隆に関する多くの示唆を与えてくれます。今日では、アルスランテペは人類の都市化、行政化、権力構造の起源に迫る貴重な文化遺産として、世界中の注目を集めております。

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