サルト:寛容と都市的ホスピタリティの場

サルト:寛容と都市的ホスピタリティの場
自由の鷹, Public domain, via Wikimedia Commons
ヨルダン・ハシェミット王国
登録区分文化遺産
世界遺産登録年2021年
登録基準(ⅱ)(ⅲ)
その他の区分
公式テキストページ中巻76p
英文タイトルAs-Salt – The Place of Tolerance and Urban Hospitality

※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら

サルト:寛容と都市的ホスピタリティの場とは

寛容ともてなしの伝統を反映した都市

サルト:寛容と都市的ホスピタリティの場は、ウズベキスタン南東部の都市サルト(現在のシャフリサブスおよびその周辺)に位置し、2023年にユネスコの世界文化遺産として登録されました。この遺産は、シルクロードの交通要衝として発展した歴史を背景に、多様な文化や宗教が共存し、人びとに対する寛容ともてなしの精神が息づいてきた都市文化の顕著な証を示しています。

サルトは、サーマーン朝、カラハン朝、ティムール朝など中央アジアの諸王朝によって継続的に重視された都市であり、その戦略的立地によって交易、宗教、知識の交流拠点として栄えてきました。ティムール朝期には、サマルカンドとともに政治・文化の中枢を担い、多くの学者、神学者、旅行者がこの地を訪れています。

この遺産の核心にあるのは、都市の構造と施設がもたらす「ホスピタリティ(もてなし)」の理念です。サルトには、伝統的な住宅、カラヴァンサライ(隊商宿)、モスク、マドラサ(神学校)、バザールなどが有機的に配置され、人びとが安全かつ快適に滞在・生活できる都市空間が形成されていました。とりわけカラヴァンサライは、旅人に宿泊、食事、祈りの場を提供する施設であり、宗教や出自を問わずに訪れる人々を受け入れるという寛容の象徴でもありました。

また、サルトの都市景観は、イスラーム建築における空間美と機能性が高度に融合したものであり、ドーム、イーワーン、アラベスク装飾などが施された建築群が現在も遺されています。これらの構造物は、地域の職人技術と芸術的感性を反映し、訪れる者に精神的な安らぎと文化的豊かさを提供してきました。

宗教的多様性の面でも、サルトは歴史的にイスラームを中心としながらも、ゾロアスター教や仏教の影響を受けた信仰の共存が見られました。このような宗教的包摂性は、異なる信仰を持つ人々の平和的共存を支える土台となり、都市全体に開かれた雰囲気を育んできました。

サルトにおける「寛容」とは、単なる宗教的寛容にとどまらず、社会的・文化的・経済的な多様性を受け入れ、それを都市の活力へと転化する知恵でもありました。この精神は、現代社会が直面する分断や排除の問題に対して、歴史から学ぶべき重要な価値を私たちに示しています。

今日、サルトの建築遺産や都市構造は保存と修復の取り組みが進められ、かつての機能や美を取り戻しつつあります。世界遺産としての登録は、この地の歴史的役割と普遍的価値を広く認識させる契機となり、中央アジアの文化的多様性と人類の寛容精神を後世に伝えるうえで、重要な意義をもっています。

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この記事を書いた人

世界遺産ハントの管理人。

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