バゲルハット:モスクを中心とした歴史都市

バゲルハット:モスクを中心とした歴史都市
ファイサルットパット2, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
バングラデシュ人民共和国
登録区分文化遺産
世界遺産登録年1985年
登録基準(ⅳ)
その他の区分
公式テキストページ中巻55p
英文タイトルHistoric Mosque City of Bagerhat

※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら

バゲルハット:モスクを中心とした歴史都市とは

ガンジス河口につくられたイスラム都市

バゲルハットは、バングラデシュ南西部に位置する中世のイスラーム都市であり、その名を知られるようになったのは15世紀、ベンガル・スルタン朝の将軍であったウルグ・ハーン・ジャハーンによって建設が始められてからです。彼はこの地に、信仰と行政、交易の中心地としての機能を備えた新たな都市を築き上げ、これによりバゲルハットは当時「ハリファバード」と呼ばれ、イスラームの教えと文化が地方にまで浸透する象徴的存在となりました。その都市計画は、湿地帯に適応した独自の構造をもち、用水路や貯水池が巧みに配置されるなど、自然環境との共生が図られています。

バゲルハットの都市遺跡群の中核を成すのは、多数のモスク建築です。中でも最も著名なのが「シャット・ガンビジ・マスジド(60のドームのモスク)」で、実際には77のドームと60本の柱を有し、堅牢かつ荘厳な赤レンガ造りの構造が特徴です。このモスクは礼拝所であると同時に、防衛拠点や地域統治の場としても機能しており、その多目的性と技術的完成度はベンガル地域のイスラーム建築における頂点といえます。また、ドームの構造にはインド亜大陸の建築様式とペルシア・トルコの技法が融合しており、建築文化の交流を体現しています。

市内には他にも、シングル・ドームのモスクや霊廟、浴場跡、貯水池(ディギ)などが数多く残されており、それぞれが都市機能と宗教的活動の中心として重要な役割を果たしていました。特にハーン・ジャハーンの霊廟は、巡礼地として今なお信仰を集めており、赤レンガと白石を用いた洗練された装飾が印象的です。また、彼が築いた運河網と貯水施設は、洪水の多いこの地域において都市の持続性を確保するための重要なインフラであり、現在もその痕跡を確認することができます。

バゲルハットの遺構は、単なる宗教都市ではなく、政治、文化、技術の中心地であったことを示しています。その建築群は石材の乏しい地域で赤レンガを主素材としながらも、高い芸術性と耐久性を備えており、地域的資源と環境条件を見事に活用した例として注目されます。これらの価値が評価され、1985年には「バゲルハット:モスクを中心とした歴史都市」としてユネスコ世界遺産に登録されました。

現在、バゲルハットの遺跡群は文化遺産としての保全が進められ、多くの建築物が修復・保存の対象となっています。都市全体が歴史的な時間の層を感じさせる静謐な空間であり、南アジアにおけるイスラーム文化の拡大と地方都市形成の過程を今に伝える貴重な証人といえるでしょう。

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この記事を書いた人

世界遺産ハントの管理人。

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