フィリピンのコルディリェーラの棚田群

フィリピンのコルディリェーラの棚田群
プリモ, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
フィリピン共和国
登録区分文化遺産
世界遺産登録年1995年
登録基準(ⅲ)(ⅳ)(ⅴ)
その他の区分文化的景観
公式テキストページ中巻197p
英文タイトルRice Terraces of the Philippine Cordilleras

※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら

フィリピンのコルディリェーラの棚田群とは

2,000年にわたって受け継がれた棚田風景

フィリピン北部ルソン島の山岳地帯に広がるコルディリェーラの棚田群は、イフガオ族によって約2000年前から築かれてきた独自の農業景観であり、アジアにおける持続可能な農耕文化の象徴といえる存在です。この壮大な棚田群は、標高1000メートルから1500メートルの山の斜面に巧みに築かれており、現代においてもその伝統技術と社会構造が維持されていることから、1995年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。

登録の対象となっているのは、バナウェ、バタッド、ハポオ、マユヤオ、キアンガンの5つの棚田地域で、いずれもイフガオ族の生活と精神文化に深く根差しています。これらの棚田は、機械に頼らず、手作業と伝統的な道具を用いて山肌に築かれ、雨水と山からの湧水を巧みに活用する灌漑技術によって支えられています。水源の保護のために森林を大切に保全するなど、自然環境との調和を重んじた暮らしが今日まで続いています。

この地域では、農耕だけでなく、社会構造や儀礼、伝統的な建築や衣装、音楽など、棚田を中心とした総合的な文化体系が今なお息づいています。とりわけ、稲作にまつわる祭礼や精霊信仰などは、自然との共生を前提としたイフガオ族の世界観を象徴しており、農作業の節目ごとに執り行われる儀式は、地域社会の絆を深める重要な役割を果たしています。

棚田の石垣や土手は、精緻な工学的知識に基づいて築かれており、崩壊を防ぐ排水システムなどが巧妙に組み込まれています。これらの技術は口承や実地の作業を通じて次世代へと継承されてきました。また、村落の集落構造も棚田と密接に関連しており、農作業や祭礼を行うための共有空間や伝統家屋などが集中的に配置されています。

コルディリェーラの棚田群は、厳しい地形と気候の中で人々が自然と共に生き抜くために培った知恵と技術の結晶であり、農業、建築、精神文化が一体となった世界的にも希少な文化遺産です。現代においては、若者の都市部への流出や気候変動の影響によってその存続が危ぶまれている一方で、地域住民や支援団体の尽力により、文化と景観の保全活動が進められています。コルディリェーラの棚田群は、人間と自然の共生の在り方を今に伝える貴重な遺産であり、未来へと受け継ぐべき文化的景観といえるでしょう。

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この記事を書いた人

世界遺産ハントの管理人。

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