エローラーの石窟寺院群

エローラーの石窟寺院群
© Vyacheslav Argenberg / http://www.vascoplanet.com/, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
インド
登録区分文化遺産
世界遺産登録年1983年
登録基準(ⅰ)(ⅲ)(ⅵ)
その他の区分
公式テキストページ中巻131p
英文タイトルEllora Caves

※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら

エローラーの石窟寺院群とは

3つの宗教が共存する聖地

エローラーの石窟寺院群は、インド・マハーラーシュトラ州に位置する世界的に貴重な宗教建築群であり、仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教という三つの宗教が共存する類例の少ない遺跡です。これらの石窟は、紀元前6世紀から紀元後10世紀頃までの長い年月をかけて、岩山を掘りぬいて造られたもので、全体で30以上の石窟が存在しています。それぞれの宗教に属する石窟が隣接しながらも独自の建築様式と信仰体系を反映しており、宗教的寛容さと文化的融合の象徴として高く評価されています。

仏教石窟はエローラー遺跡の南側に集中しており、第1窟から第12窟までが該当します。これらは主に紀元後5世紀から7世紀頃に造られたとされ、僧院としての機能を持つヴィハーラ形式の構造を持ちます。一部の石窟には仏陀の彫刻や説法場が設けられており、瞑想や学問の場としても利用されていました。

ヒンドゥー教の石窟は第13窟から第29窟で、最も有名なのが第16窟「カイラーサナータ寺院」です。この石窟は単一の岩を垂直に削り出して造られた壮大な寺院建築で、まるで独立した建物のように見える点が特徴です。その精緻な彫刻や堂々たる構造は、古代インドの建築技術の粋を示しており、シヴァ神を中心とするヒンドゥー教の神々が多数表現されています。

ジャイナ教の石窟は最も北側に位置し、第30窟から第34窟までが該当します。これらは紀元後9世紀から10世紀にかけて建立され、他の石窟に比べて規模は小さいものの、繊細な彫刻と秩序ある構造美が際立っています。ジャイナ教の教義に基づく苦行や瞑想を象徴する装飾が随所に見られ、厳粛な雰囲気を醸し出しています。

エローラーの石窟寺院群が特に注目されるのは、異なる宗教が物理的に隣接しながら共に発展し、宗教間の対話や共存の歴史を象徴している点にあります。このような複合的な宗教遺産は世界的にも稀であり、文化遺産としての価値が極めて高いとされています。

また、これらの石窟群は当時の王朝の庇護のもとで造営されたものであり、宗教と政治権力の関係性を知る上でも重要な資料となっています。特にラシュトラクータ朝やカラチャリ王朝の支援によって、巨大なヒンドゥー教寺院が建立され、王権の正統性や威信を示す象徴的建造物とされていたことが窺えます。

1998年にユネスコの世界遺産に登録されたエローラーの石窟寺院群は、単なる宗教施設を超えて、インドにおける芸術、建築、思想、宗教の結晶といえる存在です。訪れる人々は、岩を削り出して生まれた壮麗な空間に、悠久の歴史と人間の精神的営みの深さを感じ取ることができるでしょう。

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この記事を書いた人

世界遺産ハントの管理人。

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