ゴンバデ・カーブース

ゴンバデ・カーブース
ホーシン wiki60, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
イラン・イスラム共和国
登録区分文化遺産
世界遺産登録年2012年
登録基準(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)(ⅳ)
その他の区分
公式テキストページ中巻125p
英文タイトルGonbad-e Qābus

※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら

ゴンバデ・カーブースとは

中央アジアの宗教建築に影響を与えた墓廟

ゴンバデ・カーブースは、イラン北部ゴレスターン州のゴンバデ・カーブース市に所在する、イスラーム建築史上きわめて重要な記念碑的建造物です。この塔は、11世紀初頭の1006年、当時の地方君主であったカーブース・イブン・ヴシュムギールによって建設されました。高さは基壇を含めて約53メートルに達し、中世イスラーム世界における煉瓦造塔としては最も高大で、技術的・美術的完成度の高さで知られています。2012年にユネスコ世界遺産に登録され、その独自性と保存状態の良さから、文化遺産として国際的な注目を集めています。

塔の建築目的は、君主カーブースの墓標および記念碑としての性格を持っているとされています。ただし、塔の内部に埋葬室や遺体は確認されておらず、その象徴的意味合いが強いと考えられています。建物は円筒形の本体に円錐形の屋根を組み合わせた構造で、高くそびえ立つ姿は遠方からも視認可能であり、支配者の権威と知性を天に向かって示す意図が込められていると解釈されています。

建築技法においては、焼成煉瓦を用いた緻密な組積と、外壁に施された細かな装飾が特徴です。特に、塔の本体を取り囲むように配置された10本の縦方向の突起(リブ)が塔の垂直性を強調し、視覚的なダイナミズムを生み出しています。また、塔の上部にはクーフィー体による碑文が帯状に刻まれており、建設年と建主の名が記されています。これは、当時の書道美術と建築装飾の融合を示す優れた例といえます。

この建造物は、セルジューク朝以前の建築様式を代表するものであり、その後のイラン・イスラーム建築の発展に大きな影響を与えました。特に、モスクや霊廟など宗教建築における塔状構造の原型として位置づけられ、その建築的理念は中央アジアやアナトリア半島にも伝播しました。

周辺地域はかつてジール朝の文化的中心地であり、文芸や科学の保護が盛んに行われていた土地でもあります。カーブース王自身も詩人・学者として知られ、その治世における文化振興は、この記念碑の建立にも反映されています。彼の著作『カーブース・ナーマ』は後世に大きな影響を与えた教訓文学であり、この塔が単なる墓標ではなく、知の象徴として建てられた可能性も示唆されています。

現在のゴンバデ・カーブースは、保存整備が行き届いており、訪問者に対して当時の建築技術と美意識の高さを直に感じさせる貴重な遺産です。この塔は、単に歴史的建造物というだけでなく、科学、芸術、宗教、政治が融合したイスラーム中世世界の複合的精神を今に伝える、類例のない記念碑的存在といえます。

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この記事を書いた人

世界遺産ハントの管理人。

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