キナリグ人の文化的景観と移牧の道「カッチ・ヨル」

キナリグ人の文化的景観と移牧の道「カッチ・ヨル」
, Public domain, via Wikimedia Commons
アゼルバイジャン共和国
登録区分文化遺産
世界遺産登録年2023年
登録基準(ⅲ)(ⅴ)
その他の区分文化的景観
公式テキストページ中巻195p
英文タイトルCultural Landscape of Khinalig People and “Köç Yolu” Transhumance Route

※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら

キナリグ人の文化的景観と移牧の道「カッチ・ヨル」とは

キナリグ人が半農半牧生活を送る土地

キナリグ人の文化的景観と移牧の道「カッチ・ヨル」は、アゼルバイジャン北部の高地に位置する、人類の持続可能な遊牧生活と自然環境との調和を物語る重要な文化遺産です。この遺産は、2023年にユネスコの世界遺産に登録されました。カフカス山脈の一角にあるキナリグ村とそこに暮らす人々の生活様式、そして季節ごとの移牧に用いられる「カッチ・ヨル(冬の道)」は、何世紀にもわたって築かれてきた独自の生業と文化の体系を示しています。

キナリグ村は標高約2300メートルの高地にあり、周囲を険しい山々に囲まれています。そこに暮らすキナリグ人は、言語、宗教、衣装、建築などの点で独自の文化を持ち、他の民族とは異なる民族的アイデンティティを今に伝えています。石造りの家屋は斜面に段状に並び、上層の家の屋根が下層の通路として機能する構造となっており、厳しい自然環境に適応した知恵が反映されています。

キナリグ人の生活の根幹をなすのが、移牧による牧畜です。夏季は高地で放牧を行い、冬季になると低地へと移動します。この季節移動に用いられるのが、全長200キロメートルに及ぶ「カッチ・ヨル」と呼ばれる移牧の道です。この道は、羊や牛などの家畜を率いて山を越え、気候の穏やかな地域へと向かうために使われており、現在でもその伝統は継承されています。

「カッチ・ヨル」は単なる移動手段ではなく、村落間の経済的・社会的交流のルートでもあり、キナリグ人の文化を形成する上で不可欠な存在です。道沿いには一時的な野営地や休憩所、祈祷所などが設けられており、移牧の生活を支える施設群が残されています。また、移牧の過程で伝えられる物語や歌、儀礼なども、地域の無形文化遺産として高い価値を有しています。

この文化的景観は、自然環境への適応、持続可能な資源利用、地域社会の協働といった要素を含み、現代社会における環境との共生の在り方を考える上でも貴重な手がかりを与えてくれます。キナリグ人の生活文化とカッチ・ヨルの維持は、地域のアイデンティティと文化的多様性の保護に直結しており、世界的にも顕著な普遍的価値を備えた遺産であると評価されています。

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この記事を書いた人

世界遺産ハントの管理人。

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