乳香の大地:交易路と関連遺跡群

乳香の大地:交易路と関連遺跡群
オマーン国
登録区分文化遺産
世界遺産登録年2000年
登録基準(ⅲ)(ⅳ)
その他の区分
公式テキストページ中巻64p
英文タイトルLand of Frankincense

※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら

乳香の大地:交易路と関連遺跡群とは

古代の女王たちも愛した乳香に関する遺跡

「乳香の大地:交易路と関連遺跡群」は、オマーン南部のドファール地方に位置し、古代から中世にかけての乳香交易の重要な拠点として発展した地域です。この世界遺産は、2000年にユネスコの世界遺産に登録され、ウバール(シュスル)、アル=バリード、ハシュル、そしてワディ・ダウカという四つの主要構成要素から成り立っています。これらの遺跡は、乳香の栽培、生産、輸送、貿易の一連のプロセスを物語る重要な証拠として、オマーンの歴史と文化を今に伝えています。

乳香とは、カンラン科の樹木から採取される芳香樹脂であり、古代世界では宗教儀礼、医療、香料として非常に高く評価されました。オマーンのワディ・ダウカには、この乳香樹(フランキンセンス)が自生しており、現在でも採取が行われています。この地域は、世界でも最良品質の乳香を産出するとされ、その生産地としての重要性は古代から知られていました。

ハシュルとアル=バリードの遺跡は、乳香の積み出し港および交易都市として機能していた場所です。ここでは、アラビア半島内部から運ばれてきた乳香が船積みされ、アフリカ、インド、地中海世界へと広がっていきました。遺跡からは、港湾施設、倉庫、住居跡などが発見されており、当時の交易の活発さを示しています。

また、ウバール(シュスル)は、砂漠の中に存在した伝説的な交易拠点として知られており、「砂のアトランティス」とも呼ばれます。この遺跡は、古代キャラバン隊が乳香を運ぶ際の中継地であり、水源の存在が商人たちにとって重要でした。考古学的調査により、城壁や貯水池、交易路の痕跡が発見されており、かつてこの地が乳香交易路において中心的な役割を担っていたことが明らかになっています。

この一帯を通る交易路は、「乳香の道」とも呼ばれ、紀元前3千年紀からイスラーム時代に至るまで、数千年にわたり使用されてきました。オマーンから出発したキャラバンは、アラビア半島の内陸を北上し、最終的には地中海やメソポタミア、インドへと乳香を届けました。こうした交易活動を通じて、物品だけでなく文化、宗教、技術も広まりました。

乳香の大地に見られる遺跡群は、自然環境と人間の営みが調和した形で保存されており、乾燥地帯における持続可能な生活様式や商業活動の歴史的証拠として、極めて重要です。また、この地域における乳香文化は、今日においても宗教儀礼や伝統医療に用いられるなど、人々の暮らしと深く結びついています。

「乳香の大地:交易路と関連遺跡群」は、単なる交易の歴史を超え、文明間の交流、技術の伝播、そして人類の創意工夫を今に伝える貴重な遺産です。オマーンの豊かな歴史と文化を知る手がかりとして、世界遺産としての価値を有し続けています。

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この記事を書いた人

世界遺産ハントの管理人。

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