| 国 | カンボジア王国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2008年 |
| 登録基準 | (ⅰ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻152p |
| 英文タイトル | Temple of Preah Vihear |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
プレア・ビヒア寺院とは
断崖に建てられたヒンドゥー教の聖地
カンボジアとタイの国境付近、ダンレク山脈の断崖に位置するプレア・ビヒア寺院は、ヒンドゥー教の神シヴァに捧げられた聖域として、クメール王朝時代に築かれた壮麗な宗教建築です。その歴史は9世紀末にまでさかのぼり、主に11世紀から12世紀にかけて、スーリヤヴァルマン1世および2世の時代に整備と拡張が行われました。標高約500メートルの地点に築かれたこの寺院は、周囲の平野を一望できる戦略的かつ神聖な場所にあり、聖地としての象徴性が高められております。
プレア・ビヒア寺院は、一般的なクメール寺院とは異なり、南から北へと延びる線形配置を採用しており、断崖へと続く参道に沿って五つの門(ゴープラ)と複数の祠堂が連続的に並ぶ構造が特徴です。この直線的な構成は、巡礼者が段階的に神聖な空間へと近づいていく精神的・儀式的な過程を表現しており、建築に込められた宗教的意味合いが非常に深いといえます。各門や建物には、ラーマーヤナやマハーバーラタといったインド叙事詩に基づく浮彫装飾が施されており、その彫刻技術はクメール芸術の洗練された様式を今に伝えています。
寺院の中心部には本堂が置かれ、かつてはシヴァ神を祀るリンガが安置されていたと考えられています。この場所は、王の権威と神の加護が交差する神聖空間として機能しており、古代クメール王国において宗教と政治がいかに結びついていたかを物語っております。また、寺院全体の配置と装飾は、ヒンドゥー宇宙観に基づいて設計されており、山、洞窟、水といった自然要素との調和が意識されています。
2008年にユネスコの世界遺産に登録されたプレア・ビヒア寺院は、その優れた建築美と宗教的価値に加えて、長年にわたる国境問題の象徴としても注目を集めてきました。今日では、文化遺産としての保存と、地域の平和的共存を象徴する場として国際的な評価を受けています。寺院を訪れる者は、その荘厳な構造と断崖からの壮観な眺望に心を打たれるとともに、古代クメール文明の精神性と美学に触れる貴重な体験を得ることができます。

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