| 国 | タジキスタン共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2010年 |
| 登録基準 | (ⅱ)(ⅲ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻171p |
| 英文タイトル | Proto-urban site of Sarazm |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
サラズム:原始都市遺跡とは
交易で繁栄したオアシス都市
サラズムは、中央アジアに位置するタジキスタン北西部、ザラフシャン川流域に広がる新石器時代から青銅器時代初期にかけての原始都市遺跡であり、2010年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。この遺跡は、紀元前4千年紀から紀元前2千年紀初頭にかけて栄えた定住農耕社会の痕跡をとどめ、中央アジアにおける初期都市文明の形成過程を知る上で極めて重要な史跡とされています。
サラズムの遺跡は、約100ヘクタールにも及ぶ広大な範囲にわたり、住居跡、工房跡、集会施設、墓地などの構造物が発掘されています。なかでも注目されるのが、粘土や石を用いた建築技術の発達で、複数の部屋から成る住居や貯蔵施設の存在は、食料や財の管理が行われていたことを示唆しています。また、かまどや炉が備えられた居住空間からは、当時の生活様式がうかがえ、家族単位または小共同体による定住生活のあり方を明らかにしています。
この遺跡の特筆すべき点として、冶金、陶芸、石器製作といった高度な技術の存在が挙げられます。サラズムでは銅の冶金が早い段階から行われており、斧や釘、針などの道具が製造されていました。また、彩文土器や精緻な石製ビーズの出土は、装飾品や日用品の製作においても高い芸術性と技術力があったことを示しています。これらの工芸品は、遠隔地との交易によって原料を得ていたとされ、サラズムが広域な文化交流の拠点であったことを裏付けています。
遺跡からは、メソポタミアやインダス文明との接点を示す遺物も見つかっており、中央アジアがユーラシア大陸東西の文化を結ぶ中継地として機能していたことが分かります。特に、彩文土器や装飾品のモチーフには、周辺地域の文化的影響が見られ、文明の伝播と受容の痕跡をたどることが可能です。
サラズムはまた、中央アジアにおける農耕の起源を探る上でも重要な遺跡です。穀類の栽培跡や動物の飼育痕が発見されており、農業と牧畜の共存がこの地域で早くから始まっていたことが示されています。気候変動や自然環境との関わりの中で人々がいかに持続可能な生活を築いてきたかを理解するうえで、サラズムは貴重な事例となります。
今日、サラズムの遺跡は保存整備が進められ、保護施設や案内設備を通じて一般公開もなされています。発掘と研究の成果は、タジキスタン国内外の博物館で展示され、学術的にも注目されています。サラズムは、都市文明の起源と人類の創造的営為を今に伝える、中央アジアの歴史文化を語るうえで欠かせない遺産であるといえるでしょう。

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