| 国 | イラン・イスラム共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2010年 |
| 登録基準 | (ⅰ)(ⅱ)(ⅳ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻125p |
| 英文タイトル | Sheikh Safi al-din Khānegāh and Shrine Ensemble in Ardabil |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
アルダビールのシャイフ・サフィ・アッディーン廟と関連建造物群とは
スーフィズムを表す神殿群
アルダビールのシャイフ・サフィ・アッディーン廟と関連建造物群は、イラン北西部のアルダビール市に位置するイスラーム神秘主義の聖地であり、サファヴィー朝の精神的源流を今に伝える重要な文化遺産です。この廟群は、14世紀に創建されたスーフィー教団の中心であり、その後サファヴィー朝の初代君主イスマイール1世によって国家的聖域として整備され、王朝の宗教的正統性と結びつけられました。2010年にユネスコの世界遺産に登録され、建築・芸術・宗教の三要素を融合した空間として高い評価を受けています。
この廟群の中心に祀られているシャイフ・サフィ・アッディーンは、13世紀末から14世紀初頭に活躍した著名なスーフィーの導師で、後に強大なイスラーム王朝となるサファヴィー朝の精神的祖とされています。彼の教えは神秘主義的イスラーム(スーフィズム)を基盤とし、多くの弟子を育て、その影響力は宗教の枠を超えて政治にまで及びました。
霊廟群の建築構成は、参道から霊廟に至るまでの空間が複数の機能的区域に分かれ、巡礼者の精神的旅路を象徴的に表現しています。例えば、正門をくぐると礼拝堂、図書館、神学校(マドラサ)、厨房、宿泊施設、庭園などが配置されており、それぞれが儀礼や教育、接待、祈祷といった役割を担っています。この複合的な空間構成は、スーフィー教団の共同生活と宗教実践の場であったことを示しており、中世イスラーム建築の社会的側面を読み解く上で貴重な事例といえます。
建築様式はティムール朝や初期サファヴィー朝の美術的特徴を反映しており、特に青とターコイズのタイル装飾、細密なモザイク、アラベスク模様の石彫、緻密な木工細工などが目を引きます。霊廟内部には円筒形の墓塔があり、その上部を覆うドームはシンボリックな形状で、霊性の高まりと天への上昇を暗示しています。また、複数の歴代王族や教団関係者の墓もこの敷地内に集められ、宗教的権威と王権の結びつきを物語る空間構成となっています。
この聖地は、巡礼の対象としてだけでなく、教育と芸術の中心としても機能していました。附属の神学校ではイスラーム法や神秘主義が教えられ、同時に詩や書道、装飾芸術などが育まれました。これによりアルダビールは、信仰だけでなく文化の発信地としても栄えました。
今日のアルダビールのシャイフ・サフィ・アッディーン廟は、イランの国家的アイデンティティの一部として重要視され、宗教的価値と美術的価値の双方から保護されています。この霊廟群は、サファヴィー朝の成立背景を理解する上で不可欠な存在であり、またイスラーム世界におけるスーフィー教団の広がりとその社会的影響を今に伝える、貴重な歴史的・文化的遺産です。

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