| 国 | シリア・アラブ共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 1980年/2013年危機遺産登録、2017年範囲変更 |
| 登録基準 | (ⅰ)(ⅱ)(ⅳ) |
| その他の区分 | 危機遺産 |
| 公式テキストページ | 中巻65p |
| 英文タイトル | Site of Palmyra |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
古代都市パルミラとは
交易で栄えたオアシス都市の廃墟
古代都市パルミラは、現在のシリア中部に位置する遺跡で、古代ローマと東方世界を結ぶ重要な交易都市として繁栄しました。その歴史は紀元前2千年紀に遡りますが、特に1世紀から3世紀にかけてローマ帝国の保護下で絶頂期を迎えました。シリア砂漠の中に突如現れるこの都市は、「砂漠の真珠」とも称される美しさと壮大さを誇ります。
パルミラは、東方のキャラバン交易路と地中海世界を結ぶ中継地として重要な役割を担い、アラビア、ペルシア、インド、中国からの香料や絹、宝石などが集まり、ローマ世界へと運ばれていきました。こうした交易によって、都市は富と文化の多様性を獲得し、ギリシャ、ローマ、ペルシア、メソポタミアの要素が融合した独自の文化を形成しました。
都市遺構の中心には、バール神殿をはじめとする壮麗な神殿群、列柱通り、円形劇場、凱旋門などが残されており、古代建築の高度な技術と美意識を今に伝えています。特にバール神殿は、地元のセム系神とローマの神々が習合した象徴的な建築で、宗教的・文化的交流の深さを物語っています。列柱通りは都市の大動脈であり、かつて商人や巡礼者で賑わっていた光景が想起されるような保存状態を保っています。
また、パルミラはその政治的歴史においても注目される存在です。3世紀中頃、女王ゼノビアがローマ帝国に反旗を翻し、エジプトやアジア州の一部を征服して独立王国を樹立しました。彼女の短い治世は、パルミラが単なる交易都市にとどまらず、政治的・軍事的にも重要な役割を果たしていたことを示しています。
1980年にユネスコの世界遺産に登録されたパルミラは、建築、芸術、宗教、商業が融合した古代都市の理想的な姿を現在に伝える遺跡として、高く評価されています。しかし、21世紀に入り、武力衝突や文化遺産の破壊により深刻な被害を受け、多くの建造物が損壊しました。それでも、国際的な保護活動や修復努力が続けられており、かつての輝きを取り戻すための取り組みが進められています。
古代都市パルミラは、砂漠に栄えた壮大な都市文明の象徴であり、東西文化の交差点に立つ人類の遺産として、今もなお世界の注目を集め続けています。

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