| 国 | インドネシア共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2012年 |
| 登録基準 | (ⅱ)(ⅲ)(ⅴ)(ⅵ) |
| その他の区分 | 文化的景観 |
| 公式テキストページ | 中巻190p |
| 英文タイトル | Cultural Landscape of Bali Province: the Subak System as a Manifestation of the Tri Hita Karana Philosophy |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
バリの文化的景観:バリ・ヒンドゥー哲学トリ・ヒタ・カラナを表す水利システム「スバック」とは
伝統的な哲学に基づく灌漑システムによる棚田の景観
バリの文化的景観:バリ・ヒンドゥー哲学トリ・ヒタ・カラナを表す水利システム「スバック」は、インドネシア・バリ島に伝わる独自の灌漑制度と、それに支えられた農業・宗教・共同体の調和を体現する文化遺産です。このシステムは、単なる農業技術ではなく、自然と人間、神々との調和を重んじるバリ・ヒンドゥーの哲学「トリ・ヒタ・カラナ(三つの調和)」に基づいています。2012年にユネスコの世界遺産に登録され、その文化的・宗教的意義が高く評価されました。
「スバック」とは、バリ島の農民たちによって自律的に運営されてきた灌漑共同体のことで、水の配分や田の管理、農作業の調整などを民主的に行う伝統的な仕組みです。このシステムは、9世紀ごろから発展し、現在でも数百におよぶスバック組織が存在しています。水源は聖なる山とされるアグン山などから流れる湧水を主とし、各水田へと張り巡らされた水路によって、公平かつ効率的に水を供給しています。
この水利システムを支えるのが、各地に点在する水の寺院(プラ)です。特に、ウルン・ダヌ・バトゥール寺院はスバックの中心的存在で、水の神デウィ・ダヌを祀り、雨と水の循環、収穫の豊穣を祈る重要な儀礼の場となっています。水利と信仰が結びついている点が、この文化景観の大きな特色です。バリ島の農民たちは、田畑を単なる生産の場と見なさず、神聖な空間として敬い、水の恵みに感謝しながら営農を続けています。
ユネスコに登録された地域には、タマン・アユン寺院やジャティルウィの棚田などが含まれています。中でもジャティルウィは、美しく整備された棚田が広がる景勝地であり、観光地としても知られていますが、観光開発が進む中でも伝統的な農業とスバック制度が維持されている点が高く評価されています。
スバックは、バリの自然環境に適応した持続可能な農業の形であると同時に、共同体の結束や精神的価値観を体現する文化装置です。その背後にある「トリ・ヒタ・カラナ」は、神と人、人と人、人と自然の三つの関係の調和を追求する教えであり、バリ社会全体の価値観を支えています。こうした総合的な文化体系が評価され、バリの文化的景観は世界遺産としての価値を有すると認められました。
この遺産は、現代社会における持続可能な開発や共生の在り方について、多くの示唆を与えるものでもあります。バリの人々が築いてきた自然との協調的関係は、今後も世界の手本となるべき重要な知恵として継承されるべきでしょう。

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