| 国 | タジキスタン共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 自然遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2023年 |
| 登録基準 | (ⅸ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻236p |
| 英文タイトル | Tugay forests of the Tigrovaya Balka Nature Reserve |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
ティグローヴァヤ・バルカ自然保護区のツガイ森林とは
乾燥地帯に広がるユニークな森林と生態系
ティグロヴァヤ・バルカ自然保護区のトゥガイ林(Tugay forests of the Tigrovaya Balka Nature Reserve)は、タジキスタンの南部、パンジ川とヴァフシュ川の合流地点に位置する自然保護地域で、2023年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。この保護区は、中央アジアに特有のトゥガイ林と呼ばれる河畔林の生態系を広範に保存しており、極めて高い生態学的価値を持っています。
トゥガイ林は、乾燥地域における河川沿いに形成される帯状の森林で、水の供給に強く依存する特殊な環境です。これらの林は、乾燥したステップや砂漠地帯の中にあって、豊かな生物多様性を支えるオアシスのような存在です。ティグロヴァヤ・バルカでは、こうしたトゥガイ林が良好な状態で広範囲に残されており、自然の連続性と遷移過程を明確に観察することができます。
この地域はまた、中央アジアにおける生物の分布境界に位置しており、ユーラシアの森林、ステップ、砂漠の要素が交差する独特な環境を形成しています。これにより、哺乳類、鳥類、爬虫類、昆虫などさまざまな生物が生息し、中には絶滅危惧種も多く含まれます。特に注目されるのは、ブハラジカ(中央アジアシカ)、アジアノロバ(クルマンチャク)、ジャッカルなどの希少な野生動物です。
ティグロヴァヤ・バルカという名称は「虎の谷」を意味し、かつてこの地域にベンガルトラが生息していたことに由来します。トラは現在ではこの地域から姿を消しましたが、かつての豊かな自然と生態系の象徴として名前に残っています。現在も保護活動が進められており、将来的には失われた種の再導入も視野に入れた取り組みが期待されています。
また、この保護区は、自然の河川の流れと氾濫原が織りなすダイナミックな景観を特徴とし、洪水によって更新されるトゥガイ林の維持に不可欠な自然のプロセスが今もなお機能しています。こうした環境は、地球規模での気候変動に対する自然の適応能力を理解する上でも貴重な事例とされています。
ティグロヴァヤ・バルカ自然保護区のトゥガイ林は、人の手がほとんど加わっていない原生的な自然環境の中で、乾燥地帯における生命の多様性とその存続のための仕組みを示す貴重な地域であり、世界自然遺産としてふさわしい価値を有しています。
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