| 国 | カザフスタン共和国 |
|---|---|
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 世界遺産登録年 | 2003年 |
| 登録基準 | (ⅰ)(ⅲ)(ⅳ) |
| その他の区分 | |
| 公式テキストページ | 中巻125p |
| 英文タイトル | Mausoleum of Khoja Ahmed Yasawi |
※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら
ホージャ・アフマド・ヤサヴィー廟とは
現存するティムール朝最大クラスの建造物
ホージャ・アフマド・ヤサヴィー廟は、カザフスタン南部の都市トルキスタンに位置する、中央アジアのイスラーム建築を代表する霊廟です。14世紀末、ティムール帝国の創始者ティムール(タメルラン)の命によって建立されたこの建築物は、スーフィー詩人であり神秘主義者でもあったホージャ・アフマド・ヤサヴィーの墓所として建てられました。ヤサヴィーは12世紀に活躍し、テュルク語による神秘主義詩の創始者として広く尊敬を集めており、その思想は中央アジア全域に多大な影響を与えました。
霊廟の建築は1389年に開始されましたが、ティムールの死によって未完のまま残されました。それでもなお、その規模と建築技術、装飾の精緻さにおいてきわめて高い水準を示しており、ティムール朝建築の初期の代表例とされています。建物は、レンガ造の構造に加え、青と緑を基調とした陶製タイルによる装飾が施され、外観には壮麗な幾何学模様や書道が見られます。
霊廟の中心には、ホージャ・アフマド・ヤサヴィーの墓を納めた大広間があり、この空間には高さ約40メートルに達する二重ドームが設けられています。また、建物内部には礼拝室、講義室、書庫、住居、沐浴室などが配置され、単なる墓所としてではなく、宗教的・学術的な複合施設としての性格を有していました。これは、当時のスーフィー教団が精神的修行と知識の伝授を重視していたことを反映しています。
霊廟にはまた、ティムールが寄進したとされる巨大な青銅製の水盤が残っており、儀礼や参拝に用いられました。直径約2メートルのこの水盤は、鋳造技術の高さと信仰の象徴として重要な遺物となっています。ヤサヴィーの廟は以後、中央アジアにおける聖地として多くの巡礼者を引きつけ、地域の精神的中核として長く機能してきました。
この霊廟は、2003年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録理由としては、ティムール朝建築の優れた例であることに加え、スーフィズムの思想的中心地であったこと、また後世の建築様式に大きな影響を与えた点が挙げられます。さらに、この建物を通じてティムール帝国の宗教的正当性や文化的政策を読み解くことができ、政治と宗教が交錯する中世中央アジアの姿を今に伝えています。
現在も、ホージャ・アフマド・ヤサヴィー廟はカザフスタンの歴史的・精神的シンボルとされており、国内外の研究者や巡礼者、観光客にとって重要な訪問地となっています。千年近くにわたって人々の信仰と尊敬を集め続けるこの廟は、中央アジアの歴史と文化、宗教を体現するかけがえのない遺産です。

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