ザビードの歴史地区

ザビードの歴史地区
イエメン共和国
登録区分文化遺産
世界遺産登録年1993年/2008年危機遺産登録
登録基準(ⅱ)(ⅳ)(ⅵ)
その他の区分危機遺産
公式テキストページ中巻78p
英文タイトルHistoric Town of Zabid

※テキストは世界遺産1500(2024年発行の最新版)になります。参照はこちら

ザビードの歴史地区とは

イスラム諸国に多大な影響を与えた学園都市

ザビードの歴史地区は、イエメン西部、紅海沿岸に近いテイハマ地方の内陸に位置し、かつてこの地域の学問・宗教・政治の中心として繁栄した都市です。その歴史は9世紀にまでさかのぼり、ザビードは長い間、イエメンの首都としても機能し、とりわけイスラーム学術の発展において大きな役割を果たしてきました。1993年にユネスコの世界文化遺産に登録され、その後2000年には保存状態の悪化から危機遺産リストにも記載されました。

ザビードは、9世紀にアブドゥッラフマーン・ブン・ザイヤドによって建設され、以後13世紀頃まで政治と学術の両面でイエメンを主導する都市であり続けました。とくに神学・法学・哲学・文法学といった分野において、イスラーム世界の中でも高く評価される学者を輩出したザビードの大学は、多くの留学生を引き寄せ、広範な知の交流が行われた地でした。

建築的には、日干しレンガによる伝統的な都市構造が特徴で、白く塗られた住宅や迷路のように入り組んだ狭い路地が連なる街並みが今も一部に残されています。これらの建物は、気候に適した設計と装飾を持ち、イスラーム都市としての美学と実用性を兼ね備えたものといえます。特に注目すべきは、ザビード最古のモスクである「アル・アシャイル・モスク」で、9世紀に建てられたこの宗教建築は何度も改修を受けながら、今日に至るまで地域の信仰の中心として機能しています。

また、ザビードの都市設計は、モスク、スーク(市場)、居住区といったイスラーム都市の基本構造に基づいており、伝統的な都市生活が反映された貴重な都市形態を示しています。かつては数百ものモスクが存在したとされ、これらは宗教的機能にとどまらず、教育や地域の結びつきを形成する場としても重要な役割を果たしていました。

しかしながら近年、近代的な建築様式の浸透や適切な保存管理の欠如によって、伝統的建造物の破壊や消失が進み、ザビードは危機にさらされています。これを受けて国際社会とイエメン当局が協力し、保存と修復の取り組みが行われています。現代においては、ザビードの歴史的価値と文化的遺産を守りながら、持続可能な観光や地域振興を目指す動きも見られます。

ザビードの歴史地区は、単なる古都ではなく、知識と信仰、建築と都市計画が融合した中世イスラーム世界の一大拠点として、現代に多くの示唆を与える文化遺産です。その遺構と都市構造は、過去の栄光と現在の課題を象徴しながら、未来に継承されるべき貴重な歴史の証しとなっています。

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この記事を書いた人

世界遺産ハントの管理人。

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